
イッツ ビヨンド エクスペクタティオン-3-
ちょこん、とソファに座った少女は、視線をうろちょろと彷徨わせ、自分の膝にいるソニックに視線を落とした。とりあえず、少女の前にはクラウスとスティーブン、隣にはレオナルドとK.K.、他のメンバーも少女の周りにいる。
「で、君は何者なのか聞いてもいいかな?」
「私は――」
「オトハ・サクライ。スターク・インダストリーズの開発第二班チーフ、であってるか?」
コウキの言葉に、オトハはびくりと肩を揺らす。視線をコウキに向けると、「どうしてそれを」と首をかしげた。
「ほら、これ。君がソファに運ばれてる時に、君のポケットから落ちたんだ」
渡されたのはオトハの社員証である。
「えぇ、っと。私はオトハ・サクライです。この方がおっしゃったように、スターク・インダストリーズで開発第二班のチーフをしています」
「……スターク・インダストリーズ? 聞いたことがない会社だな。なんの会社かな?」
「え? スターク・インダストリーズを知らないんですか?」
オトハはきょとん、としたような表情をする。知っていて当たり前、というような表情だ。それに対して周りは知らないという表情だ。
「ごめんなさい、えっと――」
「クラウスだ。となりはスティーブン」
「クラウス、さん、に、スティーブン、さん、」
「どうかしたかな?」
「ここはアメリカですよね? 喋ってる言葉からして」
「あぁ、アメリカだ」
「なのに、ここにいる全員がスターク・インダストリーズを知らないんですか?」
「聞いたこともありませんね。外で有名な会社とかですか?」
「いいや、該当するデータはないよ」
ツェッドの言葉にスティーブンが首を振る。オトハは頭を抱えた。
「ちょっとまって、じゃあ、ニューヨークにあるスタークタワーも知らないの?」
「なんだって?」
「ニューヨークにあるスタークタワーです。私はそこにいたはずなんです」
オトハの言葉に、今度は周りが首を傾げる番だった。
「記憶が混同してるのか?」
「ありうるな」
「どういうことです?」
「ニューヨークは三年前の大崩落でなくなっただろ。何言ってんだ」
オトハの問いに答えたのは近くにいたザップだ。大崩落? と首を傾げたオトハにレオナルドが口を開く。
「知らないの? 大崩落」
「まったく」
「ここは元ニューヨークで、現ヘルサレムズ・ロッド。3年前の大崩落によってニューヨークが崩壊して、その後、再構成されたんだ」
「……なんですかそのコミックみたいな設定は。ええっと、ちょっとまってくださいね……」
レオナルドの言葉に、オトハは頭を抱えた。
「キャプテン・アメリカやアイアンマン、ソーはしってます?」
「うん、知ってるよ。コミックのヒーローだ」
レオナルドの言葉にオトハは頭を再度抱えると、立ち上がる。窓際によると、外を見下ろした。窓の下には、ニューヨークに似た町並みが広がってはいるが、歩いているのは人と人じゃない何かだ。そもそも、部屋にも人ではないものがいる。オトハはポケットから何かを取り出し、数秒固まって、ため息を付いた。
「Ok、Ok、把握した」
ひとりごとのようにそう言うと、オトハは元の位置に戻る。
「改めまして自己紹介しますね。異世界から来ました、オトハ・サクライです。トニー・スタークの部下としてスターク・インダストリーズで働いています」
「……異世界?」
「はい。正しくは平行世界、仮想世界なんて言葉もあります。とりあえず、この世界ではない世界から来ました」
はっきりとそう告げたオトハに今度はスティーブン達が頭を抱える番だった。
「どうして君がそういう思考回路になったかを含め、説明してくれないか」