イッツ ビヨンド エクスペクタティオン-4-


「多分、私が理解している世界情勢や過去と貴方達が理解している世界情勢や過去はまったく違うものだと思います。正しくは、途中までは同じでしょう。しかし、どこかで必ず分岐してるはずです」

 オトハはピン、と指を立てた。

「まず、第一に。私の世界には第二次世界大戦において、とある実験があり、そして一人の英雄が生まれています。それがキャプテン・アメリカ。しかし、隣にいる、えっと――」
「あ、レオナルドって言います。レオナルド・ウォッチです」
「――レオナルドさんが、キャップはコミックの話だと否定しました。でも私が知ってる限り彼は実在するし、そもそも友人です。いないなんてありえない」
「え、」
「第二に、私が勤めている企業、スターク・インダストリーズは世界でも名のしれた企業です。会社の名を聞けばだいたいの人は『ああ、あのトニー・スタークの会社』もしくは『アイアンマンの会社』と答えます。しかし、貴方達はコレも知らない」
「たしかに知りませんね」
「第三に、私は貴方達が常識と捉えている『大崩落』『ヘルサレムズ・ロッド』を知らない。何故、クリーチャーのようなものが闊歩できているのかも知らない。似たようなものは『去年』ニューヨークで起きた『事件』で見たけど、解決した今、とある組織がアレを放置しておくことはない」 
「事件?」
「ええ、コレは話しだすと長いので、おいておきますね。最後の理由に、私が現在研究している内容があります。正しくは、研究を引き継いだのですが」

 そう告げてオトハは何かの機械を取り出した。ヒビが入っている円形の――コンパクトのようなソレは壊れていることが伺える。

「これは?」
「私が開発した転送装置、いわゆるワープ装置です。まだ調整中だったんですけど――どうやら、コレが作動して私はここに来たようです」

 肩を竦めたオトハに、スティーブンが機械を手にとった。

「ワープってアレですか? 瞬間移動的な」
「はい。しかし、それは試作品ですし、まさか、異世界にたどり着くなんて思っていませんでした。ザ・フライみたいになりたくなくて、まだ試してもなかったんですが」
「ザ・フライ? なんです? それ?」

 首を傾げたツェッドに、レオナルドがポンッと手を叩く。

「あれですよね、ホラー映画。ハエと人が混ざるやつ」
「あ、よかった。その話は通じる」

 ほっと息を吐いたオトハに、クラウスはオトハを見た。

「でも、何故、そんな試作機の起動を? むしろ、何故、意識が?」
「勝手に触られると困るので、自分のポケットに入れてたんです。恐らく、マーク43が私を守るか掴むかした時に、誤って起動してしまったんでしょう」

 アスカはそう言ってロボットに目を向けた。そして、意識の話ですが、と言葉を続けた。

「男に、襲われまして。セキュリティが万能なビルにいたんですが、セキュリティがまったく起動しなかったようで」
「そんなこともあるんですか? 故障とか?」
「故障はありえないと思います。セキュリティーのメインプログラムはちゃんと起動していましたし。可能性としては――」

 そこで言葉を止めて、オトハは「でもありえないな」と首を振った。

「可能性としては?」
「いえ、監視カメラに映らなかったというぐらいなんですが、私や私の側にいた人にはしっかり見えていたので」
「それって――」

 レオナルドの言葉に、オトハは首を傾げる。一気に変わった周りの雰囲気に、オトハは「え?」と戸惑ったような声を出した。

「――ミス・サクライ。それは鏡に写っていたか?」
「覚えてません。でも、鏡にでも写っていればプログラムが識別すると思います」
「クラウス、異世界の話だぞ」
「しかし、彼女が異世界から来たのならば、私達の世界からミス・サクライの世界に来ることは十分に有り得る」
「だが、我々に行く手段はない」
「オトハちゃんにひっついていけば? オトハちゃんはどうせ元の世界に戻らないといけないわけだし」

 そう答えたコウキはオトハの隣に顔を出すと、「ね?」と首を傾げた。

「えーと? 確かに、私は元の世界に戻らないとですが――」
「オトハちゃんを襲った存在が、ちょっと俺達、俺達の世界の敵と類似してるんだ。だから、俺達を連れてってくれないかな?」
「――私だけで判断はできません、なので、とりあえず、連絡を取りたいんです。連絡を取れば、S.H.I.E.L.D.――世界を守る機関とも連絡をとって、そちらに話を通せば。連絡を取るにしても、この機械を直さないとどうにも……」
「なら、ここで直せばいい」
「クラウス、」

 クラウスの言葉に、スティーブンが少し顔をしかめたのがわかった。そのままクラウスは口を開く。

「ここはヘルサレムズ・ロッドだ。異世界からの来訪者がいてもおかしくはない。それに、彼女は困っている」

 その言葉に、折れたらしい。両手を上げて、スティーブンはため息を付いた。

「……ああ、わかったよ。彼女の持つ技術が他に漏れれば一大事だ。ライブラで保護しよう」
「ライブラ?」
「世界の均衡を保つことを名目に活動しているんだ」
「なるほど、S.H.I.E.L.D.の異世界バージョン」

 コウキの言葉に、ポンっとオトハは手を叩く。

「シールド? 盾のこと?」
「えーと、たしか、Strategic Homeland Intervention, Enforcement, and Logistics Division――戦略国土調停補強配備局と言うんですが、まぁ、ヒーローを管理しているというか平和を守ってるというか」

 そう思い出すように告げたオトハは佇まいを直し、ペコリと頭を下げた。

「えーと、すいませんが、お世話になります。何か協力することがあれば、バンバンやりますので」

 オトハの言葉に、クラウスは頭をあげるようにつげる。スティーブンがオトハに笑って口を開いた。

「君の保つ技術を教えてほしい」

 その目がどこか怖かった、と後にオトハはレオナルドに語る。


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