回避不可能 (2/2)
「じゃあ影山、分からない所ドコ?」
「全部」
「…………」
そうでした、コイツはろくに授業を聞いてないのだから分かるわけがないのだ。いつも白目向けやがって、くそ。でも白目事件のお陰で影山の人気度も落ちたようだ。ドンマイ影山。まあそんなことは兎も角、部活に打ち込むのもいいけど、勉強を疎かにしてるからこんなことになるのだ。いつも私や日向に言っている「日向ボゲェ」や「椎名ボゲェ」を影山に置き換えて言ってやりたい気分だ。
でもそれを言ったら中学の時の私もあまり人の事は言えないけれど。いやでもやっぱりここまで悲惨では無かったはずだ。
「ハァ……私が一から教えるしかないのか」
「おう、頼んだ」
……うん、一回殴っても支障ないよね??
▼
「……ていうわけだよ影山クン。ドゥーユーアンダースタンド?」
一通りなるべく分かりやすく説明をし終えると影山は顎に手を添えて、何やら難しい顔をしていた。
「………この、A∩BとA∪Bがどっちが共通部分でどっちが和集合なのかわかんねぇ」
「んな?!」
さっきちゃんと説明したのに……!しかもそれ初歩的なやつなのに……!
これじゃ先が思いやられる、と大きく溜め息を吐いた。影山にも理解出来るような分かりやすい説明方法は無いものかと暫く唸っていると一つ案が閃いた。
「……影山ってさ、嫌いなモノとかってある?」
「眼鏡ノッポ月島」
即答かよ。しかも物じゃなくて人かよ。なんか"眼鏡ノッポ月島"ってテンポ良く言えてなんかいい、まぁどうでもいいけどね!
"眼鏡"、"ノッポ"、"月島"という3つのワードを聞いてたった今思い出した。あのバレー部にいたやけに背が高くて性格の悪そうな彼だ。そういえば3対3の時に得点版に影山たちの相手チームのところに月島・山口チームって書かれてたじゃないか。思えば彼はやけに影山を煽っていたような気がする。あの様子からすると二人は相当仲が悪いのだろう。
「じゃあ、Aのグループに日向と影山と眼鏡ノッポ月島君と菅原先輩がいて、Bのグループに日向と影山と菅原先輩がいるとします」
「は?同じ人間は二人も存在しないだろ」
「ごちゃごちゃうるせえ、たまたま同じ名字の人間が揃ったんだよ」
「……おう」
私の突然の口調の変化にぎょっとし、何だか納得出来てないような様子の影山を余所に私は構わずノートに図を描きながら話を続けた。
「じゃあこのAのグループとBのグループの共通してる部分を挙げてみて?」
「……どちらのグループにも日向、影山、菅原さんがいる?」
「そう、じゃあ仲間外れは?」
そう聞くと影山は少し嬉しそうにドヤ顔で「眼鏡ノッポ月島」と答えた。
「つまり、結論から言うと"A∩B"が共通部分の集合。ほら、"∩"ってお前は仲間外れなんだからこっちに入る余地はねえんだよボゲェってバリア張ってます的な。どう、覚えられそう?」
「おう……!」
「……あ、分かってると思うけどいくらムカつくからって実際にやっちゃだめだからね。……で、逆に"A∪B"は"∪"が凹んでるから眼鏡ノッポ月島が入れる余地が出来ちゃうわけだから和集合なんだよ。分かった?」
「チッ、………ああ」
今思いっきり舌打ちしたよ。さっきまであんなに嬉しそうにしてたのに今度は心底嫌そうな顔をしている。そんなに嫌いなんだね月島君のこと…。でも取り敢えず納得はしてくれたようだから良かったとは思う。あと月島君、仲間外れにしてホントにごめんなさい。
ふと影山の顔を見るといつもの顔に戻っていた。
「……月島はムカつくけど、お前の教え方、面白くて分かりやすい。やっぱり頼んで良かったって思う。けど……」
「……同じ部活だったら、放課後とか、休憩の合間とかにも教えてもらえるのにな」と呟き、何食わぬ顔で再び問題集に取り掛かった。え、今、なんて――――。
「谷地さん、だっけ。その子に教わればいいんじゃない?」
ああいうことを言われて嬉しいはずなのに、明らかにいつもと様子がおかしい私はつい捻くれたことを言ってしまう。本当は行ってほしくないのに。……て、あれ?なんで私、影山に行ってほしくないの?
「あの人も確かに分かりやすいとは思う、ノートのれいあうと?も上手いし。けど俺は椎名じゃないとモチベーション上がんねえ」
「!」
ねえ、影山。そんな事言われたら期待しそうだよ。また、ドクンドクンと心臓が煩い。心なしか今度は顔も熱くなっている気がするし。もしかして私は影山のことが、好きなのかな?
……ううん、違う。"好き"なんだ。
(2014.08.31)
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