絶対領域 (2/4)
学校までは自宅から徒歩で約20分。特別近くもなく遠くもない距離だ。
影山からの電話で急いでベッドから起き上がり、服装は私服か制服か迷ったものの結局は制服に着替ることにした。
学校に着き、真っ先にバレー部の活動拠点である第二体育館に向かうと、ダンッとボールが床を打ちつける音と部員たちの掛け声、床に擦れた時にキュッと鳴るシューズのあの独特の音たちが聞こえてきた。
「やっぱ始まってる……」
全開になっていた扉から入ろうとした、が。そこから動けなかった。
よくよく考えてみると私はバレー部の部員ではない。ただの部外者なのだ。今更ながらそれを認識してしまった。でも影山は来い、と言った。しかしながら彼はちゃんと先輩や顧問に許可は取ってあるのだろうか。ここで入って先輩にでも怒られたらどうしよう。ナマイキな一年だと思われるだろう。でも入らなければ影山に怒られるし……。
考えれば考えるほど私はそこに立ち尽くすことしか出来なかった。その場から中の様子を伺っているとコート外にいた灰色の人と目が合ってしまった。
「(やばい、こっち来る……!)」
しかしよく見ると、その人の顔には見覚えがあった。
……そうだ、ボールが飛んできた時に日向と一緒にいたあの人だ。名前は確か………菅原さん、だっけ。
「もしかしてマネージャー希望の子かな…………って、あ!この前の凄いスパイク打った………えっと、椎名さん、だったよな?」
「え!あ!その、この間は色々すみませんでした。………1年の、椎名夏芽です」
「俺は3年の菅原孝支。こっちこそボール飛ばしてごめんな?で、今日はどうした?」
サ ン ネ ン セ イ 。
一気に血の気が引いたのが分かった。
まさか部活以外で3年生に対してボールを打ち付けてるなんて。しかもこんな人当たりの良さそうな先輩に。なんて恐れ多い事をしたんだ私は。
「ホントに、ホントにスミマセンでした!……あー、えっと、実は4日間だけ日向と影山の特訓に付き合ってて……。それでさっき影山から試合を観に来てくれって電話があって。でもよくよく考えると私部外者「ああ、例の特訓か!影山と日向から聞いてたよ!わざわざありがとな。おいで、今日向と影山が何か凄い事になってるから!」……っえ、」
突然菅原さんに腕をガシッと掴まれて体が引っ張られていく。ふと菅原さんの横顔を見るとどこか嬉しそうで、でも瞳は少し淋しげに映っていたような気がした。
気付いた頃にはもう得点板の横に立っていて、ちらりと覗くと2セット目に突入していた。今のところ得点は月島・山口チームが優勢のよう。得点板を挟んで反対側には黒髪で眼鏡を掛けた美人な、マネージャーさんであろう人いた。目が合うとその人は私に小さく頭を下げてきた。慌てて私も頭を下げていると、試合をしていたはずの影山たちも一時中断していて、物珍しそうにこちらに注目していた。坊主でやんちゃそうな人が「じょ、女子だと?!」と何やら騒いでいた。あの人が影山と日向のチームに入った先輩か。坊主の先輩の隣にいた日向は嬉しそうにバネのような体をぴょんぴょん跳ねてこちらに手を振ってくれたので、私も小さく手を振り返した。あぁ、こんなに見られると恥ずかしくなってきた。
「椎名!」
私の名を呼んだのは紛れもなく影山で、右手の人指し指をビッとこちらに向けてこう言い放った。
「今、点取り返すからソコでちゃんと観てろよ!!」
「!………おう!」
何かが、起こるんだ。
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