1.5

 ラクサスを見送るモニカの背中は弱々しく見えた。今までに雑誌や新聞で読んだ功績や評判が霞むほどのその姿に、見ているこちらが心配になってくる。
 それを見かねたのか、たたずんだままのモニカの肩をエルザが軽く叩いた。何を話しているのかまでは聞こえないけれど、少しだけ空気が和らいだ気がしてあたしはカウンター前の樽の上にどかりと腰かける。

「自分は戦いに来なかったのにモニカにあんな……」
「ラクサスとモニカは幼馴染みだから甘えもあるのかもしれないわ」
「えっ?あの二人が?」
「そうよ。隠してるわけじゃないと思うけど知らなかった?まあこのギルドで育ったみんな幼馴染みたいなものだけどね」

 朗らかに「でもあの2人は特別ね」と笑っているミラさんにあたしは頷いた。
 雑誌なんかはもちろん、噂話でさえ聞いたこともない。そもそもあたしが妖精の尻尾の一員になってからもそんなに接点がなかったから仕方ないことかも。

「幼馴染みだからってひどい。それに継ぐってなにぶっとんだこと言ってんのよ」
「そんなにおかしな話でもないのよ。ラクサスはマスターの孫だから」

 ただの愚痴のつもりだった。けれど、またミラさんの口から驚きの発言が飛び出す。ラクサスはマスターの実の孫。それこそ知るよしもなかった。
 あたしは驚きつつも、素直に嫌だと思う。仲間をあんなふうに思っている人がマスターになるなんて。マスターが引退できない理由なんかも噂とはいえ聞いてしまえば心が重くなる。

「仕事にでも行かないか?」

 でもモニカと話し終え、こちらに歩み寄ってきたエルザのその言葉にあたしは顔を上げた。

「グレイとルーシィも一緒だ」

 チームを組もうとエルザに誘われ、落ち込んでいた心が嘘みたいに明るくなる。さっそくみんなと仕事へ行くことになり、あたしは笑って頷いた。