そして月日が経った。
気がつけば俺はもう3年になってしまっていた。
1年の時の人気投票の結果、まだ入学して1年しか経過してないというのに2年目で生徒会長という大役に任命されてしまった俺は当初、いつか転校生が現れるんじゃないかという恐怖に身を震わせながら生徒会の仕事をこなしていた。
いくら生徒会長になったとはいえ、ここは物語の中ではない。
季節外れの転校生とやらが来るわけないだろうとわかっていても、一緒に仕事をする仲間たちを見る度に、これはフラグだとどうも思えて仕方なかったのだ。
なんせ俺を含めた役員全員が2年なんだぞ? 人気投票で決まるんだから3年から出てもおかしくないのに、なぜこうも綺麗にこのメンバーが……とか思うじゃねえか。
まあ副会長と会計のヤツは1年の時から役員だったつわものなんだが、それでもやっぱりおかしいと思うだろう。これはなんかあると思うだろう。
だが、結局2年の間に転校生が現れることはなく、3年になってしまったわけだが……またおかしな出来事が起きた。
メンバーに変動がない。
意味わからねえよ。何の呪いだよ。
これで俺の危機は去ったとか思ったあの時の感動を返してくれ。
まあでも2年の時は妹が悔しがるくらいなにも起きなかったわけだ。今回だってそうに決まってる。
そう、これは現実世界。王道などくそくらえなのだ。
が。
「……転校生、だと……?」
俺専用のデスク。コーヒーとともにそこへ置かれた書類に俺は目をこれでもかと見張った。
「ええ、そのようです。なんでも理事長の甥だとかで……」
「うわ、なにこの酷い写真!? 証明写真の意味ないんですけどー!」
「……もじゃもじゃ」
正面には副会長、両サイドから会計と書記が俺と同じく書類を眺めている。
だがその書類、たしかに転校生の情報が色々と載ってはいるのだが、会計の言うように、一番重要なはずの顔写真が酷いことになっていた。
なぜそんなことにというとその見た目のせいである。
この手の写真はその顔つきがわからなくては意味がないのに、鳥の巣のような髪と分厚い眼鏡の影響で表情がまったく読み取れない。
さらに髪と眼鏡の妨害を唯一受けていない弧を描いた口元が、より一層写真の不気味さを引き立たせており――ぶっちゃけ夜に見たくない代物になってしまっていた。マジ怖え。
ていうか、これあきらかに変装だろうが。
「それで会長。この子の案内役をしてくれと理事長の方に頼まれているのですが……どうしますか?」
「つうかよ、いつ来んだコイツ?」
「そうですね、大体1時間後ぐらいでしょうか?」
「……なんでもっと早く言わねえんだあのクソ理事長が……」
なんで当日になって報告してやがんだ。どんだけ甥っ子知られたくねえんだよ。
そんなことなら入学させんなとそう思うのはたぶん俺だけではないだろう。ホント意味わかんねえわ。
それにしてもまだ新入生歓迎会が終わったばっかだってのに、変な時期にきやがって。フラグ立ったも同然じゃねえかコレ。変装してるし甥っ子だし。
そうとなれば動くしかないだろう。
今後の学園生活のためにも、将来の俺のためにも。
王道ストーリーといえば、会長エンドが基本なのだ。
それだけは絶対に、なんとしても回避しなければならない。
男を押し倒すなんざ俺には無理。その時の俺が幸せならいいのかもしれないが、将来男とくっつくなんてそんな話嫌に決まってる。
絶対にフラグは立たせない。
たとえ立ってもバッキバキに粉砕してやる。
「――おい、会計。てめえが行け」
そして俺と転校生の戦いの火ぶたは切って落とされたのだった――。