会長は本当に鬼畜ヤローだと思う。
だってオレが転校生の写真に怖がってたの知ってるくせに、そこをあえてオレに押し付けてきたんだよ? 酷いと思わない?
この前なんかホラー映画上映会に強制参加させられたし、恐怖のあまりガチ泣きしちゃったオレ指さして爆笑してくるしでさあ。
もーあれ人間じゃないよホントに。人の皮被った鬼か悪魔だと思うね。本人に言ったらなにされるかわかったもんじゃないから口にはしないけど。
こういう雑用系は大概副会長に回されるからって、どうせ今回もそうだろうと安心してたあの時に帰りたい。マジなんでオレなわけ?
「はあ……もー帰りたいんですけどー……」
とはいえ、これも仕事だ。しかも依頼人が理事長とくればサボりたくてもサボるわけにはいかない。あとでなに言われるかわかったもんじゃないし。
仕方なく転校生の書類片手に生徒会室を飛び出したのが約1時間半前。
どうせなら時間調整してくればよかったと現在進行形で後悔するオレは今、正門前でずっとスタンバってるわけだけど
「ねー! 転校生、全然来ないじゃーん!」
そう、そうなのだ。全然まったく一向に来ないのだ転校生が。
「どんだけ時間かかってんの? ――あ、まさか会長の嫌がらせとか……?」
なんて思ったけど、その割には流石に手が込みすぎてるし、仕事より嫌がらせを優先させるような人じゃないから違うと思う。
もしかしたら間違えて裏門の方に行っちゃってる可能性もあるが、あっちは門開かないし、きっと警備の人が正門の場所を教えてくれるはずだろう。
となればやっぱり遅れてるだけか。
初っ端から大幅遅刻とかどんだけ大物なんだろうこの転校生。いい加減にしてほしい。
「こんなことなら真面目に仕事して――」
なんて懺悔し始めた頃だった。
視界に飛び込んできた1台のタクシー。
そして中から1人の少年が降り立つ。
やっと来たかと思い、立ち上がったオレは彼のところまで向かおうとして――足を止めた。
「な、なにやってんの、あの子?」
キョロキョロするまではいい。そんなことしても開くわけないのに門を揺するのもこの際だから良しとしよう。問題はその次。
なにやら後ろに下がったかと思えば、門めがけ走り出し飛び乗ろうとする転校生。
――もちろん、激突した。
「いや、無理だから! 絶対無理だから! 飛ぶ前から勝敗見えてるのに飛ぶとか君アホなの!? バカなの!? 死ぬの!?」
ゴロゴロとのた打ち回る転校生に慌てて駆け寄ろうとする。
あれだけ勢い良くぶつかったのだ。怪我してないかめちゃくちゃ心配である。
転校生と門がぶつかった衝撃音とオレの叫び声に警備員が気付いたんだろうか。ゴゴゴという鈍い音を立てながら巨大な門が開き、オレは彼の隣へと向かう。
そしてオレの存在に気付いた転校生は動きを止め、ゆっくりと顔を上げた。
「ひ……ッ!?」
額から流れる血とヒビの入ってしまった眼鏡。
ぐちゃぐちゃになった髪が素晴らしい具合に顔にまとわりついており――めちゃくちゃホラーな光景がそこにはあった。
「あ、あの……大丈夫っスか?」
いや、それこっちのセリフだから!! と全力で言いたくなったんだけど、なんていうかそれどころじゃなかった。
怖い怖い怖い怖い怖い。
ナニコレナニコレナニコレ。
血の気がどんどん引いていくオレとは違い、「あ、血い出てんじゃんよ。アハやべ、超ウケるわー」と服の袖でゴシゴシ拭いている彼。
「なんか止まんねーけど、ま、放っときゃどうにかなんだろ。――で、あーえーっと、たしか最初は副会長だったか? それじゃ副会長サン、早速理事長室までの案内お願いしたいんスけど――おう?」
血い垂らしといてなんでそんな呑気なのとか、なんで眼鏡の方は放置なのとか、なんでオレを副会長と間違えたのとか、突っ込みどころは色々あったけど、そのすべてがどうでもよくなった瞬間である。
もう無理。
やっぱオレには荷が重すぎたんだよ会長……。
徐々に遠退いていく意識。
再び目覚めた時、そこにあったのが見知った天井でちょっぴり安心したオレがいたりした。