会長に話してやるからまた来いと言われた時なにも考えず「え、なにをですか?」と聞き返してしまった俺は、あの後会長に殴られたうえ授業にも遅刻するという、まさに踏んだり蹴ったりな事態に陥った。まあ自業自得ですがね。
――そして翌日。
雨降った場合どうするんだろう?という俺のくだらない悩みは解消され、昨日同様、よく晴れた外の景色を眺めながら俺はちいさなため息をつく。
何故俺がため息なんかついているのかといえば、それはすべて昇のせいだった。
昨日、俺が「明日は一緒に昼食べられないけど、弁当はくれ」と告げれた時、アイツ一体何をどう結び付けたのか、俺に恋人でもできたのかとか聞いてきやがったのだ。
俺が男に興味ないことぐらいしってるだろうに、まったくなにを言ってるんだろうか。
もちろん俺は即座に全力で否定したんだけど、それでも完全には誤解を解けなかったらしく。
「じゃあ、なんで遅刻したの? どこで誰となにしてたわけ?」と聞かれた俺は、正直に会長と仲良くお話ししておりましたなんて言えるはずもなく、かといって咄嗟にウソをつけるほど頭もできてなかったために、「ちょっと噴水のとこで最近よく会うようになったヤツと話してただけだ」と答えたのだった。
別にウソはついてないし、俺にしては良い回答だと思ったんだが、でも昇はあやしいあやしいの一点張り。
もしや「それなら別に僕がついていってもいいよね?」と言われた時、全力で却下したのがマズかったんだろうか?
そんなこんなで一体なにをどう解釈したのか、恋人ができたの次は俺が片思いしてるんだと誤解されてしまい、結局その誤解を解くこともできず、ずるずると翌日の昼休みへと突入してしまったわけである。
だからため息も出て当然ってことだ。
「じゃあ頑張ってねえ、彼方! 僕応援してるから! 彼方なら両想いになれるって僕信じてるよ!」
それがお前の崇拝してる相手でもか。
満面の笑みを浮かべる昇にこれ以上なにを言っても無駄だと悟った俺は、誤解を解くことをあきらめ、とりあえず約束の場所に向かうことに決める。
「じゃあ弁当、ありがとうな」
「うん! あ、もしも彼方が自分で作ってあげたいとか思うようになったら言ってね! 僕が基本からしっかり教えてあげる!」
「ハハハッ。……まあ、その時は頼むわ……」
最後の最後まで誤解したまま親衛隊仲間のところへ向かっていく昇に、出そうになった涙をこらえ、俺も足を進める。
約束通り噴水のところまで来たがそこに会長の姿はなく、もしやと思い茂みの奥に向かえば、「よう」とこちらを向いて手を上げる会長と目が合った。
− − − − −
「――っていう話がありまして」
「くく……っ、」
会長の顔を見た瞬間、無性に昨日今日の出来事を話したくなった俺がすべてを暴露すれば、隣に座る会長は口元を片手で覆いながら楽しそうに笑っていやがった。
「ちょっと、なに笑ってるんですか! 会長のせいでもあるんですからね!」
「はあ? 俺は関係ねえじゃねえか」
「関係あります!」
だって会長が今日また会おうみたいな話を振らなければこんなことにはならなかったんだから。
しかし「拒否しなかったてめえが悪いだけだろ」と言われてしまい、たしかにそれもそうだと納得してしまった俺は、反論する言葉を失ってしまった。
「……それにしてもてめえ変わってんな」
そうやって無言で渋い顔をする俺に会長が再度笑みを浮かべるが、俺にはその言葉の意味がわからず首を捻った。
「普通、俺と恋人なんて言われたら喜ぶもんなんだがな」
「いやいやいや。俺にそっちの気はないんで。ノンケなんで」
「なんて言ってるヤツも結局、俺が優しくしてやればコロッといくんだが?」
「それはきっと少なからず会長に好意を抱いてた人なんじゃないですかね? ていうかそうに決まってます。――だからそうやって顔近付けてくんのやめてくれませんかねえ!?」
楽しそうにぐいぐいと距離を詰めてくる会長。
体を右へ右へと移動し、距離を取ろうとする俺。
左手首を掴まれ内心「うぎゃあああああ」と叫びながら、近付いてくる会長から顔を右手で必死にガードしていれば、掌の先から「ぶふっ」という噴き出すような声が聞こえた。
「なあに焦ってんだてめえは。冗談に決まってんだろうが」
「冗談って……言うならもっとわかり易いのにしてください! そんなんじゃいくら心臓があっても足りませんよ!!」
「ドキドキしすぎてってか?」
「ええまあ! ただし恐怖からくるドキドキですけどね!」
「くくっ、くはははは! 言うじゃねえかこの野郎っ」
「ちょ、!?」
何故かツボに入ったらしく、腹を抱え出した会長がムカついてしょうがなかい。
なにか会長を黙らせるいい方法はないのか。
そうやって頭を巡らせてるうちに、俺は本題に入ってないことに今更になって気付いたりした。