二度あることは三度あるということわざがあるが、まさかそれを体現してしまうとはなんてことだ。
まあこのことわざ、本当は物事は繰り返すものだから気をつけろよって意味なんだけど……そんなことは横にでも置いとくとして。
とりあえず目撃してしまった手前、無視するわけには流石にいかないのでいつものように声をかけてみる。
「あのー、大丈夫ですか?」
「……」
「おーい、かいちょーう?」
「……」
「聞こえてますかー――ってアレ?」
一向に返事をしてくれないので、倒れている会長の肩をべしべしと叩いてみる。
が、ピクリとも動かない。
そんなひたすら床と熱い抱擁を交わす会長を見て思う。
「……これって結構やばい状況なんじゃ?」
その後俺が取った行動はただ一つだった。
− − − − −
幸いにも俺たちのいた場所は1階だったために、会長を運ぶのはそこまで苦ではなかった。
とはいえ流石に自分よりもでかく、しかも意識を飛ばして余計重くなっているであろう会長を背負うのは骨が折れるから、そこはしっかりと引きずらせてもらったけども。
とにかく保健室までズルズルと会長をお運びし気合と根性でベッドに寝かせたあと、健やかに寝息を立てる会長を見ながら、さてこのあとどうしたもんかと1人考える。
俺がこの場にいるのもどうかと思うが、放課後だし、このまま放置していくのもよくない気がする。
考えすぎだろうけど、寝ている会長をどうにかしようとする輩が出てこないとは限らないし――というか、ここの保健医が先ずなにか仕出かしそうで怖い。不在でマジよかったと思う。
かといって第2保健室までは流石に運ぶ気力もないし、あっちのちゃらんぽらんな保健医は生徒となんかやらかしてそうで嫌だ。たしかに声かければ中断してくれるだろうが、そんな気まずさにこの俺が耐えられるわけがない。
となるとやっぱり、俺が見てるのが一番か。
「それにしても流石会長、綺麗な顔してるなー」
よいしょ、と椅子を適当に拝借し、まじまじと会長の顔を覗き見る。
倒れた時はどうするかと思ったが、寝息を立てる姿を見てホッとしたのをよく覚えている。
眼の下には巨大な熊が生息しているし、もしかしたら過労かなんかで倒れたのかもしれない。
そういえば昇から、会長が今仕事を全部1人でしていると聞いた。
その時はそんな馬鹿なとか思っていたけど、今の会長の姿を見る限りそれは事実だったようである。
5月の始めに転校生が現れてから結構経つ。
俺の予想通り転校生は多くの親衛隊から制裁という名のいじめを受けているようだった。
けれど本人はまったくの無反応。むしろそれをきっかけに更に生徒会をはじめとするイケメン達と仲良くなってしまったらしい。
生徒会――といっても会長を除いたメンバーなんだけど、彼らは転校生といることが楽しくてしょうがないらしく、仕事を放棄してまで転校生を構いに行ってるとか。
転校生の天真爛漫で来るもの拒まずなところが周りと距離を取りがちなイケメン達にウケてるんだろうなとは思うし、その気持ちもなんとなくだがわかる。
とはいえ、それを仕事を放棄する理由にしていいわけがない。
そんなこと本人たちも十分理解してるだろうに……。
なんて。
そうは思うことはできても、たかが一般生徒の俺にはどうすることもできないし、会長には悪いがどうにかしたいとも思わない。やっぱりわが身は可愛いし。
なんだかなあと思いつつ、もう一度会長の顔を見る。
ピクリと反応した。
「ぅん……、ここ…は……?」
「あ、起きました?」
もう少しくらい寝ていればいいのに、なんて早い目覚めだろうか。
もしや自己防衛本能かなんかが俺の気配を察知して――って、んなわけないか。
「……誰だてめえ」
そんなくだらないことを考えながらぼんやりと見ていれば、俺の存在を認識したらしい会長がこれでもかと眉間にしわを寄せる。
「ええっと。会長が倒れてるの発見して保健室まで運んだ者なんですが」
「いけませんでした?」と逆に問いかければしわはそのまま、じっと睨みつけるように見つめてくる会長。俺は美形にすごまれるというなんとも辛い状況に思わず目線を逸らしてしまった。
ていうか別に俺悪いことなんかしてないはずなのに、この仕打ちってなんなんだろうか。
「てめえ……なにもしてねえだろうな?」
その上さらに意味のわからない――いや、意味わかるんだが――疑いをかけてくる会長にちょっぴり泣きたくなったのは、しょうがないことだと思うんだ。