俺様で高慢で〜なんて言われている会長がまさか俺なんかに「ありがとう」と言ってくるとは流石に思いもしなかった。助けて当然とか思ってるんだとばっかり思ったし。
礼を言う前だって悪かったと謝罪してきたし、予想とまったく違う態度に少しだけ、会長の親衛隊になる昇たちの気持ちがわかったような気がした。まあ、あそこの親衛隊はほとんどが会長のセフレになることを目的にしているんだけど。
それはともかくとして。
見直した直後まさか目の前でコケるとは思わなかったが、まあそれは疲れていたせいだろうと勝手に解釈させてもらうとする。じゃないと会長が可哀そうで仕方がない。会長が実はドジっ子属性でしたとかマジ誰得だよって感じだし。
なんていう話もこの際横に置いとくとして。
あれから1週間ほど経ったある日のこと。
あの後会長になにがあったのかは知らないが、翌日には過労で倒れたという噂が広まっており、そのお陰かなんなのか、他の生徒会メンバーが仕事に無事復帰したとの情報を昇伝いに入手した。
この前会長を見かけた時も目の下に隈はなく元気だったし、倒れたところをガッツリ目撃してしまった身としては本当によかったと思う。
そして今日、俺は今年に入って会長とのエンカウント率が半端なく上昇していることに今更ながら気付いた。
ちなみに何故気付いたかといえば今日――というか今、再び会長を目撃してしまったからである。
今回の場所は校舎少し離れた場所。バラ園近くの噴水付近。
ここのベンチは温かい昼、食事をするにはもってこいの場所だったりする。
今年最初の合同親衛隊会議が食堂を貸し切って行われているため、昇もいないしちょうどいい天気だしってことで、俺は教室ではなくここでのんびりに昼食を取っていたのだ。
そして弁当を片付け、ベンチに横になってひと眠りしようとした頃だったか、茂みの方から人の声が聞こえてきたのは。
最初は気にしない方向でいこうと目を瞑っていたんだけど、静かになればなるほど聞こえてくる声が耳触りに感じて眠るに眠れなくて。
段々イライラしてきた俺は、一体何してんだとその茂みの方へこっそり向かったわけである。
そして茂みの隙間からこっそり覗いてみたら――まあ、そういう現場だったわけですよ。
「……」
少し考えればたどり着く結果だっただけに、後悔よりも自分に対する呆れの方が大きかった。
幸い、会長の方は気付いてないらしい。
ここはなにも見なかったということにしておいて、教室に戻ろう。
そう決めた俺がゆっくりと向きを変える途中、しゃがんでいたせいか足が茂みにずっぽり入ってしまい、葉々がガサガサという音を立てた。
「――おい、そこ誰かいんのか?」
だからそう声を掛けられてもしかたないわけで。
その状況に結構てんぱっていた俺は、そのまま逃げればいいものの、なにを考えたのか
「にゃ、にゃー」
なんて猫の鳴き真似をしていたのである。アホか俺。
「きゃあああああ!!」
「チッ、覗きとはいい趣味してんじゃねえかよ」
会長の低い声とたぶん親衛隊かなんだであろう悲鳴に嫌な汗が背筋を伝う。
やばい……!! なんて今更思ってもムダ。自業自得すぎる。
どんどん近付いてくる芝生を踏む足音に、どうしようどうしようと考えるも答えが出ない。
いや、全力ダッシュで逃げれば今からでも間に合うのかもしれないが、残念なことに足がまったく動かなかった。
そしてそんなことしてる間にも足音は近付き……止まった。
「あん?」
俺の後姿を見て、クエスチョンマークを浮かべる会長。
「おい、てめえはあの時の……」
「ハハハ。どうもご無沙汰してます……」
観念した俺が振り向き様にひきつった笑顔を向けてみれば、頭上から盛大なため息が聞こえた気がした。