- あいあい傘きみとしたはじめてのキスは、優しい夏の雨の味がした。どこかすっぱいような、あまいような、ふしぎな後味の滲むキスだった。
- マグカップいつからだろうか。青と赤、ふたつのマグカップが、食器棚のずっと奥、白いホコリの絨毯の上で静かに眠るようになったのは。
- ゆらゆらぼんやりと、あの子は自分のように絶えず煙草を咥えるようなこともなければ、飲酒さえもあまり好んでいなかったことを思い返す。
- クロユリ哀れで愚図な女だと思った。羂索にはあの女のなにが五条悟を気を引くのか、大変理解に苦しんだし、心底解りたくもなかった。
- 最期のことばポップコーンをつまむ五条先生を眺めながら、いつかの「先生は特定の彼女をつくらないらしい」という先輩の言葉を思い出した。
- 定位置私の知る限り、この男がかつての恋人を想って泣いているところを見たことは一度もなかった。数年ぶりに酒を交わした今日までは。
- 昔の手紙カバーの裏側に一枚の写真が挟まれているのを発見する。見てみるとそこには、制服姿の私と同期に挟まれる笑顔の五条さんがいた。
- かげおくり言うつもりではなかった言葉が、溢れ出た。あの子、死んだって本当?悟は少しの沈黙を挟んだのち本当だよ、とだけ簡潔に答える。
- 快晴傑が僕の青だったなら、彼女は僕の春だった。いっとう大切に想っていた。馬鹿みたいに好きだった。そして僕の、すべてだった。
- きみを忘れたまるで自傷行為のように、見知らぬ女を抱くようになった。何度も女の名前を間違えて呼んでしまったので、頬をぶたれたりもした。