私とポッターは友人と呼べる間柄になった。擦れ違えば挨拶もするし雑談もする。以前の関係を思えば驚くべき進歩だ。


「やぁ、アリア。」

「アリアに近づくな。」

「……スネイプ、君って奴は本当に邪魔ばかりしてくれる。」


が、やはりこの二人はどう足掻いても犬猿の仲のようでまったく変わらない。私とポッターが会話することすら気に食わないようで、セブルスはいつも間に割って入る。一応二人とも和解したようだが、お互いに顔を合わせれば決闘かの如く呪文を掛け合っているのでどっちもどっちだ。


「アリア、話があるんだけど…いいかしら?」

「どうしたの?」

「ちょっと来てちょうだい。セブ、アリア借りるわよ。」

「あぁ、わかった。」

「ちょ、エバンズ!僕はアリアに用事が…」

「貴様は黙っていろ。」


後ろで言い争っている声が聞こえるが、ぐいぐいと腕を引かれるがままリリーに連れていかれる。セブルスとポッターを二人きりにして大丈夫かな。ちらりと振り返ればセブルスが胸倉を掴んでいる姿が目に入る、全然穏やかじゃない。


「待ってリリー!セブルスが…」

「いいの、大丈夫よ。放っておきなさい。」

「……でも、」

「それよりも!アリア!」


振り向きざまに肩を掴まれ背筋がピンと伸びる。随分深刻な顔をしているが、一体なにがあったというのか。こちらまで緊張してきた。


「ポッターのこと、どう思ってるの?」


思いがけない質問にきょとんとしてしまう。監督生としての仕事や勉強についての相談かと思っていたので拍子抜けする。


「前は大嫌いだったけど、今は普通に友人として接してるわ。悪戯ももうされないし、平気よ?」

「本当の本当に友人としか思ってないのね?」

「そう、だけど…。」


ガクガクと肩を揺すられ気持ちが悪くなってきた。あまりの勢いに戸惑うが、もしかしてという考えが浮かんだ。


「リリー、ポッターのことが好きなのね?大丈夫、そんな目で彼を見てないから。」


なんだ、そんな心配しなくても大丈夫なのに。微笑み返せばぴたりと彼女の動きが止まる。確かに色々なことがあって彼を見直したのは事実だけれど、それが恋愛感情に結び付くかと言われればそうではない。
彼女にはセブルスと幸せになってもらいたかったが、それは私個人の願望であり人の感情は簡単に変えられないし思い通りにはならない。セブルスを慰める準備でもしておこうか。ポッターに憎しみを抱くようにはならないことを願おう。


「アリア、あのね……ううん、ごめんなさい。やっぱりなんでもないわ、気にしないで。」

「?そう、よかった。」


彼女の憂いがなくなったのなら嬉しい。
リリーと別れ寮へ戻れば、先に戻っていたセブルスに肩を掴まれる。あれ、さっきも似たようなことをされたような。


「よく聞いてくれ。」

「うん?どうしたの。」

「……今、気になる異性はいるのか?」


強張った面持ちとは裏腹な質問に笑ってしまった。リリーもセブルスも恋バナがしたいのだろうか。いや、彼の場合まるで思春期の娘を持つ父親のような雰囲気を思わせる。


「リリーもセブも似たようなこと聞いてくるのね。」

「リリーにも聞かれたのか。」

「そうよ、さっきね。私は今セブが一番だから、好きな人も恋人もいらないわ。」

「そ、そうか…」


あ、照れてる。すまなかったと言いながら肩に置かれた手が離れていくのを見つめながら、ふむと考え込む。


「ねぇ、セブ。」

「なんだ。」

「リリーに告白しないの?」


まさかの爆弾発言だったようで、ピシリと固まってしまった。タイミングが悪かっただろうか。


「……別に、そういうつもりはない。」

「私はリリーが家族になったら嬉しいけどなー」

「……アリア、」

「はーい、ごめんなさい。」


苦々しそうに告げられたが薄ら色づいた頬を見て顔が緩んでしまう。揶揄い交じりの態度を咎めるように睨まれるが怖くもなんともない。むしろ何だか可愛い。
でもリリーはポッターが気になっているようだし…あまりお節介を焼かないほうがいいとは思うんだけど…


「私はセブを応援してるわ。」

「僕の心配より自分の心配をしてくれ。」

「心配って?」

「…いや、なんでもない。」


歯切れの悪い返答を残し自室へ戻ってしまった。頭の上にクエスチョンマークを浮かべた私だけが、談話室に取り残されたのだった。




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