パキッと暖炉の薪が弾ける音がする。まどろんでいた意識が現実世界へと引き戻された。本格的な冬を迎えようとしている最中、長時間寒空の下に晒された身体はようやくまともな温度へ戻ってきた気がする。
クディッチの試合は、結果からいうにグリフィンドールが勝利した。
初めて肌で感じた試合の雰囲気は、まさに圧巻。驚くほどのスピードで飛び回る選手を追うのは目が回りそうではあったが、素直に興奮を覚えたのは間違いない。リリーや他の生徒が夢中になる気持ちも少しだけ分かった気がする。飛行訓練が苦手な私からすれば羨ましいがこればっかりはセンスの問題だと諦めている。試合が終わりグリフィンドールが勝利を収め喜びを分かち合っている中、スリザリンはブーイングと非難の嵐だった。私としても残念ではあったけれど、目的の半分以上はポッターの試合姿を見届けることだった為なんとなく居心地が悪い。試合終了後もまだ選手たちは箒に跨り上空を飛び回っていて、グリフィンドールの選手はスリザリンを除く寮から拍手と歓声が惜しみなく送られていた。無意識のうちに探していた姿を目に留めじっと見つめる。気づいてほしい、なんて身勝手な感情。
「アリア、寮へ戻りましょ!こうなったらやけ食いだわ!」
隣で観戦していたナンシーが頬を膨らませ人混みを縫って歩いていく。慌てて後を追いながらも、再度見上げた先で私を見つめる視線に気づいた。また心臓が変な音を立てる。掲げられたガッツポーズに思わず笑ってしまい、小さく手を振り返したところでナンシーが呼ぶ声のボリュームが増す。ご機嫌斜めのようだ。
寮へ戻る途中、レイブンクローの生徒から呼び出しを受けてしまったナンシーと別れ一人で談話室にいたものの帰ってくる気配がない。そして今に至るのだがセブルスも居ないようで寂しい。放置されたココアはすっかり冷えてしまい飲む気にならない。
「…はぁ、」
考えれば考える程ポッターのことばかり頭を占める。一体私はどうしてしまったというのか。誰も居ないのをいいことに大きなソファとクッションへ身体を倒せば柔らかな素材に包み込まれ思わず瞳を閉じる。最近の私はどうかしてしまっている。こんなにもぐちゃぐちゃな気持ち、誰にも言えるわけがない。
「やだ、こんなところで寝ちゃダメよ。アリア、起きて!」
ぐりぐりと頭をクッションへ押し付けていればナンシーが帰ってきた。試合会場を出るまでぷんぷんしていた彼女の様子がすっかり変わっている。周りに花でも飛んでいるかのように機嫌がいい。
「遅かったのね。ずいぶんと機嫌がよさそうだけど?」
「そうなの!聞いて聞いて!」
ソファの背もたれからずいっと顔を近づけてきた今にも飛び跳ねてしまいそうな彼女から少し距離を取る。頬が薄らと染まりきらきらと瞳を輝かせる姿はちょっとだけ眩しい。
「ディーンにダンスパーティーの誘いを受けたの。夢みたい!」
きゃーっと両頬に手を当てはしゃぐ彼女を横目に思考が停止する。ダンスパーティー…クリスマスに行われるパーティーのことだろうか。入学以来ヴォルデモートのことで手一杯で一度も参加したことはないが、恐らくそうだろう。が、最終学年ともなれば話が違う。強制参加のパーティーではないけれど最高学年は全員参加するものだというのが暗黙の了解のようになっていた。
「ドレスもアクセサリーも髪型もどうしよう?」
彼女の悩みとは次元が違う。そもそもパートナーがいない私はそれどころではない。
あぁ、また悩みの種が増えた。
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