「アリア、お待たせ」
ぱたぱたと小走りでこちらへ向かってくる彼女へ視線を合わせると、腰を上げローブを掃う。然程待ってはいないけれど申し訳なさそうに眉を下げる彼女に駆け寄り、ホグズミードへ向け歩き出した。
「ドレスに合うネックレスを一緒に選んでほしいの。」
「楽しみね。…でも、まさかリリーがセブと一緒に行くなんて思わなかった。」
「あら、そうかしら?セブは優しいし、付き合いも長いからずっと一緒に行きたいって思ってたのよ。」
ご機嫌な様子ではしゃぐ彼女を見る。ぐるりと周りを見渡しても皆一様に浮足立っていた。騒がしいのは好きではないけれど楽しそうに談笑する少女たちを見るのは嫌いじゃない。いや、少女と呼ぶにはもう相応しくないだろう。横にいるリリーも含め、全員が立派なレディだった。
「こっちとこのネックレス、どちらがいいかしら?」
「リリーの綺麗なエメラルドの瞳には、こっちのほうが映えると思う。…うん、綺麗よ。」
「本当?アリアが言うならこっちにするわね。待ってて、お会計してくるから!」
何軒か見て回ったアクセサリーショップで、ようやくお気に召したネックレスが決まったらしい。会計の間店先でリリーを待つ。すっかり雪化粧に染まった街は道行く人たちの距離を縮め色めき立てていた。寄り添う恋人たちの姿が眩しくて胸がツキリと痛んだ。ん?どうしてだろう。
「寒いしバタービールでも飲んで帰りましょ。」
リリーの提案に迷わず了承すると三本の箒へと向かう。寒さから必然的に早歩きになってしまうのは仕方がない。着いた先ではホグワーツ生がそこかしこで盛り上がっていた。適当な席へ座りバタービールを頼めば、手慣れたようにすぐさま運ばれてきたためぐいっと一口煽る。
「ねぇ、おかしなことを聞いてもいい?」
「なにかしら?」
「その…リリーはポッターのことが好きだと思ってたのだけど、違うの?」
「…ゲホッ、ケホッ!…えぇ?なんですって?」
口に含んだバタービールが彼女の周りへ飛び散り、慌てて近くのタオルを手渡せば荒々しく口元を拭っている。咳き込むリリーの背中を摩っていれば落ち着いたようで、使用済みのタオルを勢いよくテーブルへ叩きつけた。
「どうしてそんなことになるの!?」
「前にポッターとのことを聞かれたでしょう?あの時否定しなかったから、てっきりそうだと思っていたんだけど…」
「そういえばそんなことも…はっきり訂正しなかった私も悪いわ。ごめんなさいね、アリア」
「じゃあ、」
「まったく一ミリもポッターなんて興味がないわ。」
ぐびぐびとバタービールを勢いよく飲み干して、先ほどと同様にドンッと音を立ててコップがテーブルへ叩きつけられる。更に少量飛び散った液体を拭きながらリリーを見つめれば、ぷんぷんという効果音が付きそうなほど憤慨していた。ま、まさかそこまで仲が悪かったとは…よく知らなかったとはいえ、悪いことを言ってしまった。
「変なこと言ってごめんね、リリー。」
「違うの、アリアは悪くないわ。」
「…ポッターじゃないなら、セブのことが好きなの?」
こんなこと私が聞いていい立場ではないのだが、恐る恐る尋ねる。暫く考え込むように黙ってしまった彼女は、エメラルドの瞳を細め人差し指を唇に添えると「ナイショ」とだけ囁いた。同性ながらドキッとしてしまう仕草に見惚れてしまう。
「私のことよりアリアのことよ!…パーティー、誰と行くか決まっているの?」
聞かれるとは思っていたが、改めて問われると気恥ずかしい。興奮したように顔を近づけてくるリリーに、尚更羞恥心が募る。観念して息を吐けば爛々と目を輝かせた彼女が期待したように待ちわびていた。
「……一応、パートナーは決まっているわ。」
「きゃあ!本当に!?私も知っている人かしら?」
「うーん、そうね…知ってはいると思う。」
「どこの寮?誰なの?」
「……ナイショ。」
先ほどの彼女を真似て微笑めば、ぱちりと一つ瞬きをした後満面の笑みを向けられた。
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