「やぁ、君が一人なんて珍しいじゃないか」


三年生になって初めて訪れたホグズミード村。早々にセブルスと逸れた私は絶賛迷子なのだが、どうして彼がここにいるのか。


「無視なんて酷いな。僕の声聞こえてる?」


顔を逸らした先へわざわざ回り込んでくる彼に、ぐっと眉間に皴が寄る。いつもなら呪文の一つや二つ飛んできそうなものの、今日は何だか様子がおかしい。


「…あなたこそ、いつもべったりなお友達と一緒じゃないの?」

「シリウス達とは別行動していて、後で合流する予定なのさ。」


そういう君こそ一人なのかい?と問われ、返答に詰まる。正直に迷子だなんて言いたくない。こんな奴に頼るくらいなら知らない人間に道を聞くほうがマシだわ。


「放っておいて。私に構わないで他の所へ行ったらどう?」

「片時もスニベルスの傍を離れたがらない君が一人ってことは…もしかして迷子?」

「違うわ。ついてこないで。」

「そっちには叫びの屋敷しかないけど。」


ポッターを振り切ろうと進めていた足がピタリと止まる。にやにやと笑っている姿が視界の端に映り、不快感を全面に出せば彼は慌てたように両手をひらひらさせている。


「そんな怖い顔しなくてもいいじゃないか。迷子なんだろ?スニベルスの所まで案内してあげるよ」

「いらないわ、次は何をされるかわからないもの。そんなことより、セブルスをその名で呼ぶのはやめてちょうだい。」

「何をいまさら!奴が泣きみそのスニベリーである事実は変わらないだろう?」

「そんなことない!どうして私たちにこだわるの。嫌いなら、放っておけばいいでしょう!」


話していても埒が明かない。次第に苛立ちが募っていくのが分かる。ローブから杖を取り出し突き付ければ、レンズ越しの榛色が曇った気がした。


「……そうだね。僕は君が嫌いだよ」


吹き付ける冬の風が全身の温度を奪っていく。杖を持つ手が氷のように冷え切っていた。どうしてあなたがそんな顔をするの。
だって、まるで……


「アリア!こんなところで何をしている!」


突然の第三者の声によって、沈黙が破られる。息を切らしたセブルスが私を後ろへ隠すと、杖を突き付けた。


「ポッター、貴様アリアに何をしていた。」

「騎士気取りのお兄様の登場かい?僕は困っていた君の妹を助けてあげようとしていただけさ。」

「貴様がそんなことをするはずがない。いつものように呪いの呪文をかけようとしていたんだろう!」

「やめてセブ!私はまだ何もされていないわ」

「まだなんて人聞きの悪い。先に杖を突き付けてきたのはアリアのほうだろ?」

「あなたは黙ってて!セブ、逸れてごめんなさい。帰ろう?」


もうこの場の収拾がつかなくなってきた。セブルスの肩を掴んでみても、睨み合う二人の視線は外れそうにもない。どうすればいいのやら。


「いい年して迷子になるような愚図な妹から、精々目を離さないようにするんだねスニベリー」


いつものように飄々とした態度で吐き捨てると、さっさとこの場から去っていった。先ほどの萎らしい態度は見間違いだろうか。


「本当に何もされていないんだな?怪我はないか」

「大丈夫よ、本当に何もない。心配かけてごめんね」

「どうしてポッターなんかと一緒にいたんだ。」

「たまたま、本当に偶然会っただけよ。」

「……気をつけろ。何かあってからでは対処できない」

「…うん、ありがとう。」


日頃の悪戯を思い出しているのか、セブルスの表情は苦々しい。私自身もたくさん怪我をさせられているので、気持ちは充分わかっているつもりだった。やっぱり今日のポッターはなにかおかしかったのだろう。そうでなければあんなに話かけてくるはずもない。

繋いだ手から伝わる温度は、冷え切った指先には温かすぎた。









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