「まったく…女の子でこんなに医務室常習犯なのはあなたぐらいですよ、Ms.スネイプ」

「すみません……」


医務室へ通う羽目になっているのは自分のせいではなく、ポッター達のせいなのだがマダムからすればお構いなし。どろりとした鳶色の液体が入ったゴブレットを渡される。


「それを飲み終わったら大人しく寝ていること。いいですね?」

「……はい。」

「安静のために明日も一日医務室で過ごしてもらいますよ。」


早々にカーテンを閉め出ていく姿を見送り、ゴブレットに口をつける。吐き出しそうになる衝動を抑えながら飲み終えると、ゆっくりとベッドへ背中を預けた。

反省しなければ。
何故私が医務室で過ごす羽目になっているかといえば、それはポッター達のせいではなく紛れもなく自分自身のせいである。




ロウェナ・レイブンクローの髪飾り

ヴォルデモートの分霊箱の一つであるそれを、必要の部屋で発見したまではよかった。しかし、破壊できる方法は限られていて一般の呪文では太刀打ちできない。
原作では悪霊の火によって破壊されていたけれど、私自身が巻き込まれる危険性のほうが高い。上に、扱えるかも不明な危険な賭けである。
バジリスクの毒牙だって、難易度が高すぎる。完全にお手上げ状態だった。

修復不能なまでに破壊する必要のある分霊箱に、教科書なんぞに載っている呪文なんて役に立つわけもない。図書館へ通い、有効そうな呪文を片っ端から髪飾りへ放つ日々を繰り返していた。

そうして私はぶっ倒れた。それも突然に。
マダム曰く、魔力がすっからかん状態で身体がボロボロになっているそうだ。思えば最近体調も良くなかった気がする。慣れない魔法を無闇に使用したつけが回ってきたということだろう。




「気分はどうかね?」


閉じていた瞳を開ければ、ダンブルドアがこちらを見つめていた。気配もなく現れるところは相変わらずのようだった。


「平気です。」

「それはよかった。また随分と無茶をしたようじゃの。」


ダンブルドアは近くの椅子を魔法で引き寄せると、ゆっくりと腰を下ろした。……居座る気のようで、ただ様子を見に来ただけではないことを悟る。


「魔力が底を尽きる程、魔法を使い続けた理由を問うてもよいか?」

「……あなたはどこまで分かっているのですか。」

「はて、何のことだか。見当もつかぬ。故に、おぬしに問うておるのじゃ。」


このじじい…っ。押し問答になるのはこちらが疲れるだけ。トム・リドルの気持ちが少しだけ分かったような気がする。私も彼が苦手だ。


「なにをそんなに怯えておる。生き急ぎ、力量を誤り、自分の身を顧みないのは実に愚かなことじゃよ。」


そんなことは分かっている。ずっとずっと前から分かってる。でも私がやらなければ誰がやるというの。誰が彼らを守るというの。


「守りたいものがあるんです。失うわけにはいかない。私の命を懸けてでも、変えたい未来があるんです。」

「アリア、おぬしの覚悟は充分にわかっておるよ。しかし一人で背負うには、随分と重い覚悟じゃ。」

「私には時間がないんです、先生。」


私のやろうとしていることが、この世界にとって本当に良いことなのかなんて分からない。分からなくていい。私にとって世界の中心はセブルスで、彼を守るためならなんだってしてやる。


「ならば尚更、協力者が必要だとは思わぬか?」

「おぬしのやろうとしていることは、一筋縄ではいかぬであろう。」


そうだ。こんな小娘一人が足掻いたところで世界は何も変わらない。
でも、できるかもしれない。諦めきれない。


「ダンブルドア先生。…明後日、お時間をいただけますか。話があります。」


決断の時が来た。







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