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▼005.だけど貴方は気付かないでいて/侑士
20161015 005. だけど貴方は気付かないでいて1日中女の子に囲まれているその人と、今日中にどうやって会う時間を作れるだろう。脳内シュミレーションを重ねまくって出した結論、狙い目は部活に行く直前の昇降口。
「これ、あげる。誕生日おめでとう」
語尾が震えていないかだけを願って、さりげなさを装って。
メガネの奥の目は気だるそうに瞬きを一つ。「なんや、知っとったんか」「毎年女子に騒がれてて、知らない方が不思議でしょ」お得意の甘いセリフとその空気に毎年何人の女の子が泣かされていると思ってるんだろう。柔らかいふりしてガードの硬い忍足に、イベントを利用して近づけるなんて考える女の子は星の数ほどいる。
「この間の跡部の誕生日もすごかったらしいよ。忘れてて後からさんざん怒られたけど」
屈んでローファーに履き替える忍足が顔を上げる。普段見上げることの多い彼が、顔をのぞき込むようにして目を細めた。
「跡部の誕生日は忘れてて、俺のは毎年覚えてるんか」
「!?」
あー、そうなんや、俺のだけねえ。ふうん。へえー。顔に熱が集まっているのがわかる。ニヤニヤしているその顔が腹立たしい。
「わかりやすいわ、自分」吹き出してからぐっと顔が近付いて耳元に息がかかった。
「おおきにな」と頭に置かれた手が髪を掻き乱して。
ボサボサになった髪を整えて顔をあげる頃には、渡したプレゼントを左手に、ひらひらさせながら歩く後ろ姿だけ。
(2018/01/02)