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▼096.致死量なんて知らない/侑士
20141104 096.致死量なんて知らないローファーが入っていない。ぐっと喉の奥が詰まる。靴箱のふたを開けて、周りにだれもいないことを確認してしゃがみこんだ。
今日あったことが目の奥でリマインドされる。友達だったはずの彼女は口をきいてくれなくなった。知らない後輩にすれ違いざま暴言を吐かれた。予備でもってきていたはずの長袖ジャージがごみ箱に入ってた。そして、それから?
いつも冷静で、落ち着いていて大人でスマートなフェミニスト。侑士はもてる。心の底から冷たいくせに、まるで優しいように見せかけるのがうまいのだ。女の子がどうしたら恋に落ちるのかその原理を知っている。二人の世界をいとも簡単に作り上げる。世界中の女の子が死ぬほど羨む綺麗な世界だ。
「なんや、まだ居ったんか」聞きなれた低音が昇降口の向こうから聞こえた。ぐっと唇をかむ。その綺麗に作り上げられた赤い絨毯の上を、侑士に手を引かれながらあるくことができるなら、道脇からの罵声も嫌みも私はなかったことにできるのだった。
(2018/01/02)