Sub rose

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正気に戻った私は、ひとまず学校に向かった。
書いたノートを勉強机の鍵のかかる引き出しの中に入れる。
古来より、見られちゃいけない本…厨二病拗らせた真っ黒な本やエ◯本、同人誌などは、ベッドの下、本棚の奥底、図鑑の間、そして鍵のかかる引き出しの中だと決まっている。みんなそうでしょ??
普通に本棚に入れておいて、妹が「◯◯…これ…」と◯◯◯の◯◯系本を持ってきた時の絶望は今だに背中がゾワっとする。
生まれた時からお姉ちゃんではなく呼び捨てだったが、あの時ほど妹の目が冷たかったことはない。私が全面的に悪かった。
ハーゲン◯ッツで買収できてほんとによかった…。

そんな前世の恐怖を思い出しながらルーティーンのように繰り返した道を歩いていく。
都会ではないが交通の便に困らないくらいの町であり、自然も豊かだ。コウモリなどが夕方に飛んでいるのはご愛嬌である。

下駄箱で上履きに履き替え、教室へと向かうっていく。
ついてなきゃいけない時間の十分前には教室に着くので焦ることはない。
友人に会えば挨拶をし、嫌々任された室長としての仕事をこなしながら席につく。
そう、ここまでは普通だったのだ。
…この世界線の違和感に気付いたのは、お昼を食べている時の話である。
この学校では、前世のように給食が出るのではなく、お弁当を持ち寄り好きな子同士で食べるスタイルだ。
前世の高校もこんな感じだったので別段何も思わないが…友人達の名にふと既視感を抱いたのである。

「そういえば、いつもより顔色が良さそうですけど何かありましたか?」

「…逆だろ逆、いつもが通常どうりなんだろ…。んで、どうなんだよ。」

はて、何がそんなにひっかかるんだろう。
呼びかけているその声に気付かずに朝作ってきたサンドウィッチを頬張る。
やはり、前世に研究に研究を重ねた特製ハムサンド≠ヘ美味しい。あの時頑張って良かった…!!

「もしもし、聞いてます??もしもーし。」

「あっ、ごめん。聞いてなかった、なんの話だっけ??」

そう返した私の一言に左の隣の彼も大きくため息をつき、彼女は呆れたようにこたえる。

「…もういいです。
とりあえず、今日はス◯ーツ◯ラダイ◯に行く予定でしたよね?ちゃんと予定あけてますか??」

「もっもちろんです。
ちゃんとスケジュール帳だって書いてるんだから、大丈夫だって!!それより、獪岳の方が心配でしょ!?なんで私?!」

「俺はお前と違って一回言ったことは忘れねぇよ。」

「はぁ?!私だって忘れないし!!」

「おいおい…??つい先日仕事のうっかりを教えたこと忘れたのかよ?」

「いやいやいや、それは確かにありがとうだけど、あんたが告られた時に泣いちゃった子を慰めたのは私でしょ?!チャラよチャラ!!」

「その前にもおまえのうっかりをどうにかしてやっただろうが!」

「うるさい!!この頑固者!」

「てめぇ…!」

睨みつけあっていると、机が共鳴するようなゴンと重たい音が響く。
しまったと思った時には遅く、二人して恐る恐るしのぶちゃん≠フ顔を見た。
…美人ほど怒ると怖い。
当事者でなかったら是非とも顔を1時間ぐらい拝みたい、と現実逃避をしてしまった。

「…二人とも、これ以上ご飯の時間を邪魔するならこうですよ?」

シュッシュッとにこやかな顔でファイティングポーズをとるが、その腕は半端なく速い。
知ってる、それ絶対に痛いやつやん。
目を合わせた私たちはゆっくりと着席し昼食を再開した。


しのぶちゃん≠フ怖さは知っている。
二人と仲良くなる時、学校中の噂になるような大喧嘩をした。
あの時は、私も獪岳≠烽ネりふり構わず喧嘩したが、こんな小さいことでしのぶちゃん≠怒らせたくないほどにはなかなかの怖さだった。
まあ、獪岳≠烽セけど。

3人の空気が元に戻った頃に話を戻す。

「じゃあ、各々掃除当番が終わったら校門で集合?それとも一回お家帰ってから集合?」

「そうですねぇ…、めんどくさいですけど一回家に帰ってからの方がいいですかね。」

「…いいんじゃねーの。」

二人の同意が得られたところで、食べ終わった私は次の授業の準備をする。
そういえば、いつも渋っている獪岳≠ヘ今回どうして一緒に行くことになったんだっけ…。しのぶちゃん?≠ノ聞いたらクスクス笑いながら獪岳の好物は桃だと思う、と彼の弟に聞いたんですがあの様子だとほんとのようですね≠ニ耳元で囁いた。やばい、耳が溶ける、いい声!!!と内心心が荒ぶっていたが、9月の特別メニューは桃だったことを思い出す。

…なるほど、好物だったか。 

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