Sub rose

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あの時、私が書いたのはF◯te/sta◯ ni◯ht≠ニ呼ばれるものである。日本のとある地方都市「冬木市」に数十年に一度現れるとされる、持ち主のあらゆる願いを叶える「聖杯」。
7人の魔術師(マスター)は7騎の使い魔(サーヴァント)と契約し、聖杯を巡る抗争「聖杯戦争」に臨む物語である。まあ、聖杯を手にできるのは一組だけなので、彼らは最後の一組となるまで互いに殺し合う故に心をえぐる物語でもある。
現在令和の世界線に住んでいる方たちには、Heaven’s Feel編が一、二章の地上波放送と三章が映画でやるのでぜひ見て欲しい。
これがまた救えない話で…っと違う違う、番宣じゃなかったわ。

私が書いたこれが、出版社へと流れ、持っていった兄へと話がいき、私のもとに情報がたどり着いたときには本になることが決まっていたというなんとも救えない話である。
なんでっ作者が一番最後に知るんだよ!!!!
この、わかめ!!悪魔!!鬼っ!!!!!!!


…この話、元がゲームなだけあって大雑把な流れが三ルートもあるんだが、Bad&Dead Endだけで40もあるという壮大さである。
さすがに、全部は書ききれないので、一つのルートごとに客観的に見て一番いいエンドとやりきれないエンドをifとtrueとして載せることとなった。
せっかく、顔色が回復したのに前回よりも顔色が悪くなった私はしのぶちゃんに、
「わぁあ、しなびれた茄子みたいですね??うふふ」と言われた。(かわいい、かわいいかわいいかわいいかわii…)
言外に早く治せやという強い意志を感じましたまる。
こうした私の精神疲労、罪悪感の中で出版された本は異例の売り上げで売れていった。
前世でも売れた本だもんな…私が変な書き方しない限りストーリーは良いもんね……はぁ…。
出版社の人たちは、年齢とかを前面に出していった方がいい!!とゴリ押しだったが、学生だからという理由で全ての作者情報を門外不出にしてもらった…ありがとう…お兄ちゃん…口から産まれて来たのかな?って思うくらい凄く回る口だったね…。


出版されてからは、ビクつきながら登校している。
だって怖くない??もし、作者とか読者が私と同じように転生してたらどうするの?!?!
同じ世界線から来ている人だっているかもしれないじゃん…著作権……やだこわすぎ…。
一応、作者の名前は同じ世界線から来た人たちが確信できるようにと誰でも知っている名前とコメント欄には二次創作です、とだけ記されている。
今のところ、ファンレター、メール、SNSなどにも、それに対するレスポンスが来たことはない。
いいことなのだが、すこし寂しいので複雑な気持ちである。 



さて、本を出版した事を知っているのは、兄の楽しい仲間達と出版社関連、学校の理事長、産屋敷耀哉さんなのだが…黒いわかめを兄にもってる身としては、産屋敷さんの行動がとても怖い。
原作軸での兄…めっちゃ恨まれてたもんね…あの場面はなかなかの狂気だったわ…産屋敷さんはバーサーカーだったのかな??って思ったもん。
今世の兄と会いにいった時は特になんの反応もしてなかったけど…

…まあ、私は何もしてないし、存在してないし!!道徳的に悪いことはしてn((著作権)
怯えることはないよね?!
なんくるすないさー!!!(白目)
とどこぞの子鹿のような精神を奮い立たせて学校に来ていたのに…

「鬼舞辻〜、おまえ呼び出しかかったから今日居残りな?」

って朝の会で言われる私の気持ちになって?!?!
朝に言わないでよ?!!夕方までガクブルで過ごせって事ですか?!?!いじめ!だめ!絶対!!!!!
しのぶちゃんの目はめっちゃ怖いし…、私は!!!何もしてません!!!!(切実)
獪岳なんて、面白そうな目で見てくるんだけど???他人事だからってか??ヤッチャウゾ???てのひらでころころしちゃうぞ???
精神的に結構やばたにえん…みんなだって嫌でしょ??先生からの呼び出しとか…その場で言えよ…。
課題やり忘れとか、素行の悪いことなんてしてないはずだけど…苛立ちに任せて買い食いしたことがバレたとか??最近意識が朦朧としながら学校通ってたしな…あり得そう…最悪だ…もうちょっとうまくやらなきゃ私…。
気持ちを誤魔化して授業に取り組もうと思ってたのに、嫌いな英語で当てられるわ、古典で前に立たされて発表させられるわで最悪すぎる…。
やりたくないことってどうしてこんなに重なるのかな??


「はああああぁぁぁ…」

「長い、鬱陶しい、うざい、くたばれ」

「なんでや?!ため息ついただけでなんで??」

机をいつも通り三人で固め、昼食の時間を共にする。
少し涼しくなってきた風がスッと顔を撫でるが、秋の訪れを感じられる余裕などない。
斜め左右の二人は、なんとも言えない顔をしながらわたしを責め立てた。

「しのぶちゃんも黙ってニコニコしてないでなんか言ってよぉ…」

「うふふふ…、長いため息が煩わしくて鬱陶しいですよ…後ろをご覧になってはいかがです?綺麗な三途の川が見えると思いますので。」

「なんで言葉をお上品にしたの???しのぶちゃんまで私をいじめるんだけど?!私が何かした????莫逆の友であったはずの君たちから酷い仕打ち受けすぎじゃない???裏切らない人間なんていないと?その通りだよ!!このコンチクsy..も゛ガァっ!!!」

一人でペラペラ語り出した私に痺れの切らした二人から、私のお昼のベーグルを口に突っ込まれ、挙げ句の果てに押し込まれるという人を人とも思っていない行為を強いられた。
こいつら…いつか、仕返ししてやる…という無念を抱えながら押し込められたベーグルを咀嚼する。
春はベーグル、夏はベーグル、秋はベーグル、冬はベーグルとかの有名な清少納言も言っている。
硬すぎて凶器になること以外は優れた食べ物だ。
「ちょろいな」という言葉が聞こえた気がするが、無視を決め込み食べ進める。
ベーグルが一番おいしいわ。

「そういえば、今日の呼び出し何か心当たりあるんです?」

「いや、全く…。
此処のところ忙しすぎたせいで記憶が曖昧で…買い食いしてるところが見つかったとか???」

しのぶちゃんに言われ、朧げな記憶を探るが思い当たる節はない。

「ちがいそうですね…。
では、以前から気になっていた貴方のその忙しさは関係ありません…?貴方いつも突拍子もない事をしでかすじゃないですか。」

「まさか…ありえないよ。
第一、学園長に許可取ってるし呼び出されるようn…な…」

凄まじいオーラが見えるようだった。
外は、紅葉が素晴らしく秀麗な秋景色で爽やかにも構わず、私に降りかかる圧力は、極楽と地獄のように違ったものだった。
視線を横に滑らせて獪岳とクラスメイト達をすれば、全員が素知らぬ顔をしながら冷や汗をかいていた。
私、貴方か口に出してくれるまで、打ち明けてくれるまで待っていたんですと彼女は立ち上がる。
洗練された歩き方は優雅だった。が、美しいとは恐怖を思い出させるものでもある。
実際、人の笑みの元は威嚇であったのだから。
私の側まできた彼女は、肩に手を置き、スルリと首に滑らせた。

「お話ししていただけますよね?」

今のこの状況は、わたしを恐慌させるには十分で。
恐ろしくか細い声で了承の意を漏らすしかなかったのだ。






執筆していた事を事細かく説明することになった私…。
恥ずかしすぎる、どんな羞恥プレイなの???えっ?慣れれば快感に変わるって?変わってたまるか!このボケナスぅぅう!!

「題名は無理です!!勘弁してくださいっ…!」

「…いつも訳がわからないことまで説明するのに何も言ってこなかったので、人に言えないような事をしでかしたかと心配しました…」

「ほうれん草をわきまえてるわたしすごい!!
てか、人に言えないことって…私そんな信用なかったの??????!!怪しまれるようなことしてないと思うんですけど?!」

「…はっ、お前ちょろいからな。
知らないうちに悪事に手を染めてるタイプだろ」

「あ!!り!!え!!な!!い!!ありえない!!
そんな世間が分からないほど箱入りお嬢じゃないんですけど?!!ほぼ大人のようなもんだから?!」

「どこが大人なんだよ」

「変な宗教にハマりそうですよね…」

「既に壺買ってたりしてな」

「情に流されて連帯保証人になって、借金抱えたりとか…」

「ちょっと!!!二人とも私の悪いifに花咲かせないでもらえます!!??」

だんだんと悪い風評にで盛り上がる二人に不満の目を向けながらブスッと態度で昼食を最後まで食べ切る。
中身オババの私にしてみれば眼前の友人の方が危なっかしいものだ。
気持ち荒立っている私と対照的に世界は変わらず無慈悲に淀みなく回り続ける。やるせなさをかかえながら午後の授業の準備をすることにしたのだった。 

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