今日は朝から青空が広がり、空には雲一つ浮いていなかった。
容赦なく照りつける太陽は、気温をぐんぐんと上昇させ、止まるところを知らない。
じりじりと暑く、灼けるような日差しだ。
そんな日であろうと、ジムリーダーたる者トレーニングは欠かさない。
首からかけたタオルだけでは、到底追い付かないくらいの汗のせいで、ユニフォームの上着は嫌な湿り気を帯びていた。
「少し休憩にしようか、なまえくん」
「はい…!」
木陰で一息吐くと、彼女は息を切らして両膝に手をついた。
なまえくんは、つい最近エンジンジムに配属されたばかりのジムトレーナー。
元々ルリナくんのジムにいた子だったが、この前の異動でうちにやってきた。
みずタイプのジムで長く働いていたせいか、ほのおタイプのポケモンの扱いに慣れていないと言った彼女に、僕は一緒にトレーニングしようと声をかけた。
最初は、純粋に若い子には負けてられないと思っただけだったし、彼女の不安や悩みを少しでも和らげてあげられるのならと、共にトレーニングをして励まし合っていた。
けれど、いつからだっただろう。
彼女とトレーニングする日々だけでは、物足りなさを感じるようになった。
トレーニングをしにきたはずなのに、今はトレーニング以外のことしか、なまえくんしか考えられない。
もちろん彼女にそんな気がないことは、わかっている。
だから、君のことが好きだなんて、言えるわけがない。
「カブさんは、こんなに暑くても全然平気なんですね…」
「僕のポケモンくん達は、暑い日は一際元気だからね、トレーニング日和だよ」
「そうですか…私は元気が半減しちゃいます」
あはは、と乾いた笑いを浮かべるなまえくん。
口ではそう言って平気なフリをしていても、僕は平気じゃなかった。
君の動きの全てに感情を揺さぶられて、どうしようもないから。
額から落ちる汗を拭う君を見ているだけで、心拍数は驚くほど上昇する。
ただ水分補給してるだけなのに、その火照った身体に飲料水を流し込む喉元の動きでさえ、目が離せない。
高い位置でまとめた髪のせいで、顕になったうなじを伝う汗が見えて、生唾を飲み込む。
もしも許されるのならば、その白い首筋に噛み付いて痕を残したいぐらい。
ねえ、なまえくん。
君は、どんな味がするんだろう。
とろける甘いお菓子みたいな味だろうか、それとも、真っ赤な鉄の味なんだろうか。
この際、どっちでも、どうだっていい。
(君がほしいよ、なまえくん)
木陰の合間から覗いた強烈な日差しに、一瞬全ての音が聞こえなくなって、思考が止まった気がした。
そんな感覚が、君以外何も考えられない僕を表してるかのように思えた。
誰かが天気を書き換えてくれるまで、いつまでも続く暑さが僕をますます狂わせる。
「…カブさん?」
「ああ、ごめんね、トレーニング再開しようか」
なまえくんの呼びかけでようやく我に帰って、彼女の手を取ると立ち上がらせた。
触れた手から感じる君の熱は、燃える男をさらに熱くさせる。
君は、僕がこんなふうに思っているなんて、きっと微塵も知らないんだろうな。
やっぱり今日は暑いですね、と困ったように笑うなまえくんに日差しが強いからね、と返事する。
そう、これでいいんだ。
心乱されるのは、ひでりのせいにしておけばいい。
ひでり
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