※プレイヤーヒロイン、精神崩壊表現あり
キミの変化に気付いたのは、キミがチャンピオンクラスになってしばらく経った頃だった。
あくタイプのポケモンを手持ちに入れていなかったはずのキミが、ボクにあくタイプのポケモンの育成のコツを聞いてきた。
あくタイプのポケモン達は、みんなそれぞれ癖があって一筋縄では行かない。
だからその時は、ただキミが彼らとの接し方に戸惑っているだけなんだと思っていた。
「なまえくんじゃん!ボクと勝負していくっしょ?」
「うん…」
次にキミの異変に気付いたのは、しばらくしてチーム・セギンに遊びにきた時だった。
いつもみたいに勝負しようとお誘いをしたら、キミは酷く疲れたような顔でオッケーしてくれた。
少し気になったけど、いつも通りバトルしようと思ってボクはワルビアルを繰り出した。
するとキミは、初めて見るポケモンを繰り出す。
真っ白でしなやかな身体に、剣のような大きな牙を持った豹を思わせる風貌。
そのポケモンが大きく口を開けて吠えると、辺りの空気は急に重たくなって、何故かボクのワルビアルの守りが弱くなったように感じた。
「パオジアン、つららおとし」
パオジアンと呼ばれたポケモンに指示を出した時のなまえくんの声は枯れていて、どこか憎しみを孕んだような物言いだった。
それでもその時は、ただキミがチャンピオンとアカデミーの両立に疲れているだけなんだと思っていた。
「なまえくん…ホントにボクと勝負してくわけ?」
「…うん」
ボクがキミの異常に気付いたのは、また別の日にチーム・セギンに遊びにきた時だった。
いつもみたいに勝負しようとお誘いしたかったけれど、とてもそんなことは言えないくらい、キミの纏う空気は淀んでいた。
それでも、キミはボクと勝負したいと言ったからおかしいとは思ったけれど、なんとかいつも通りバトルしようと思ってボクはノクタスを繰り出した。
するとキミは、また初めて見るポケモンを繰り出す。
真っ赤で小さな身体に、勾玉のような大きな瞳を持った金魚を思わせる風貌。
そのポケモンが尾びれを揺らして唸ると、辺りの空気は急に重たくなって、またボクのノクタスの守りが弱くなったように感じた。
「イーユイ…れんごく」
イーユイと呼ばれたポケモンに指示を出した時のなまえくんの声はますます枯れていて、どこか妬みを含んだような眼差しだった。
そんなキミの様子が流石におかしいと思って、勝負の後にキミに何かあったのか話しかけても、キミは何も言わずにチーム・セギンから立ち去った。
「ねえなまえくん…今日はやめない?」
「…だいじょうぶ」
さらに別の日、チーム・セギンに遊びにきたキミが纏う空気は、身の毛もよだつほどに恐ろしいものだった。
キミは大丈夫でも、ボクは大丈夫じゃない。
それでもキミはボクの制止も聞かずに、また初めて見るポケモンを繰り出す。
真っ茶色のごつごつした身体に、鉄器のような大きな器を持った鹿を思わせる風貌。
そのポケモンが頭を持ち上げて叫ぶと、辺りの空気は更に重たくなって、ボクは2本の足で立っているのがやっとだった。
「ディンルー…じしん」
ボクがポケモンを出してもないのに、なまえくんは自分のポケモンに指示を出す。
勝負の見境もなくなるほど、何か悪いものに取り憑かれているような、そんな嫌な予感がした。
ディンルーと呼ばれたポケモンに指示を出した時のなまえくんの声はもうほとんど聞こえなかったけれど、どこか恐怖の混じったような声だった。
そんなキミがほっとけなくて、勝負の後に何があったのか聞こうとしてキミの瞳を覗き込んだら、ボクは驚きのあまり腰を抜かしてそのまま動けなくなった。
「…なまえくんをこんな風にしたの、キミ達っしょ」
「……」
ある日、なまえくんは勝負の約束よりも先に、また見たことのないポケモンを繰り出す。
何も言わずに、恨みを込めたような瞳でボクを見て、ただ立ち尽くしていた。
真っ黒で柔らかい身体に、ずらりと並んだ木の板を持った蝸牛を思わせる風貌。
そのポケモンが身体を震わし呻くと、辺りの空気はますます重たくなって、とうとうボクは立っていられなくなった。
キミがこんな風になってしまった理由が知りたくて、ボクなりに調べていた。
キミが最近使い始めた、この見たこともない4匹のポケモンは、人の憎しみ、妬み、恐怖、恨みから生まれたポケモン達。
そんな彼らを従えているうちに、きっとキミは彼らの持っている負の感情に蝕まれてしまったんだと思う。
あくタイプのポケモンと向き合ってる、ボクだからわかる。
彼らは、必要以上に踏み込んではならない悪。
「なまえくん…止められなくて、ゴメン…」
手持ちのポケモン達が全員戦闘不能になると、ボクの目の前は真っ暗になった。
最後に見たキミの姿は、まるで災厄そのもののように見えた。
Lord Of Calamity
back / next
main
top