高校生を陰と陽で分けるのならば、私はいわゆる陰キャラと呼ばれる部類だと思う。
休み時間は基本的に1人で、イヤホンをしてお気に入りの曲を聴きながらお気に入りの本を読む。
放課後は部活があれば少しだけ顔を出して、なければ特に寄り道をすることなく帰宅。
ああ、新刊と新譜が出たらそれは別。
友達もたくさんいるなんて、とてもじゃないけど言えない。
だからそんな私には、いつも明るくて元気でノリの良い彼みたいな人と関わることなんて、ずっとないと思っていた。
「…っ!」
「あ、わり!」
下校時間、友達とふざけ合って走り去っていく男子高生は、私の手元の本が落ちたことも、親に買ってもらったちょっと良い音楽プレイヤーが鞄から落ちてイヤホンが外れたことも知らない。
人にぶつかったら、もっと言うことあるでしょうに。
深い溜め息を吐き出しながら、昨日から読み始めた本を拾い、次に音楽プレイヤーを拾おうとした時。
私よりも先に、それに誰かが触れた。
「大丈夫か?」
「え、あ…」
「アイツら、人にぶつかったらもっと言うことあんじゃねーの?」
その人は、私が思っていたことを同じように口にした。
同じクラスの、花村くん。
彼を先程と同じ基準で分けるのならば、きっと陽キャラ。
私とは正反対だ。
なあ?となんの迷いもなく私に同意を求めた花村くんの顔を、まともに見ることもなく俯いたまま私は頷いた。
「傷付いてねぇ…ん?てか、結構いいヤツ使ってんじゃん」
「あ、うん…」
「うお!?しかもこの曲、最新アルバムのやつだろ!」
イヤホンが抜けて、画面が明るくなった音楽プレイヤーには、さっきまで流れていた好きなアーティストの新曲。
そんなにメジャーなアーティストじゃないのに、彼もこの人を知っているなんて少し意外で、つい花村くんの方を見てしまった。
俺もこのアーティスト好きなんだよなー、と私の音楽プレイヤーを眺めながらリズムを取る花村くん。
そんな彼を見ていたら、いつもの自分じゃ絶対に言わないような一言をつい言ってしまった。
「その、良ければ…貸そうか?」
「マジ!?頼む!今月金欠で買えねーって思ってたんだよ!」
この曲入ってるから早く聴きてぇの、と嬉しそうに笑う花村くんは、みんなが言うように整った美男子そのものだった。
ああ、私には少し眩しすぎる。
「みょうじっていつもイヤホンしてっから」
「え…」
「音楽好きなんだろうなーって思ってたけど、まさか好きなアーティストも一緒だったとはな」
それは、私も同じ。
そう言おうと、彼の顔をこっそり見ようとして息を呑んだ。
そして、私の心臓が爆発したと思った。
花村くんと目が合って、すごく嬉しそうに笑いかけられたからか、急に目眩がして胸の辺りが凄く痛む。
たったそれだけで、こんなことになるなんて。
それに、いつも明るくて元気でノリの良い彼みたいな、それも男の子にそんな顔を向けられたことなんてないから、私はもうどうしたらいいかわからない。
けれど、1つだけわかったことがある。
(あ、やば…い、かも…)
人のこと、こうやって好きになるんだ、って。
困っているところを助けてくれた異性に恋をする、恋愛小説で王道なストーリー。
今ならそれも、わかる気がする。
そう思うと、なんか気が合いそーだな、と人の気も知らずににかっと歯を見せて笑う花村くんが、なんだか素敵な王子様みたいに見えてきた。
みんなは彼のことを、ガッカリ王子なんて言うけれど。
そんなの、嘘じゃん。
ガッカリなんて嘘ばっかり
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