なまえと付き合い始めておよそ2ヶ月。
そろそろ巷のカップル達みたいに、手なんかも繋いじゃって良い時期なのでは、とふと思うことがある。
いや、むしろそれでも遅過ぎるくらい。
ところが、俺と俺の彼女のなまえに至っては手を触った事すら無いんじゃないか、ってレベルでスキンシップが少ない。
なんつーか、普通のカップルってのがどういうものかもイマイチよく知らないから何とも言えないが、これは異常事態なのか。
それとも案外普通だったりして?
だとしたら、俺の想い描いてた甘ったるい程のラブラブライフは、何かのマンガの読み過ぎという結論で良いのだろうか。
確かに、なまえはわりとドライな女の子だし、べたべたするようなスキンシップはしなさそうだけど。



「どうかしたの、花村」


「あぁ、いや、何でもねーよ…」



そんな考え事をしながら彼女と帰り道を歩いていたら、ふとなまえに呼ばれた。
そして俺が生返事を返すとふーん、と俺を横目で見ながらなまえは隣を歩く。
そうそう、そういえば俺名前でも呼ばれてないんだったわ。
俺は親しみと特別感を込めてなまえを名前で呼んでいるのに、なまえは未だに俺を花村と呼ぶ。
そんな事が不満なんてって思われるかもしれないが、こう見えて俺は結構気にしてる。
だってこれじゃあ、友達の時と何にも変わってない。



「なまえって、俺の事花村って言うよな」


「あー、うん、そうかも」


「かもって…え、何も気にしてない感じ?」


「…まさか、気にしてるの?」



そう言われて、一瞬足が止まる。
だよな、男の俺がそんな事気にしてたなんて知ったらそういう返事になるよな。
あー、もしかして呆れた?
ガッカリ王子が呆れられたら、ただのガッカリになってしまう。



「いや、別に!なまえが好きなように呼べば良いんじゃねーの」



何事もなかった様に立ち止まったなまえの横を通り過ぎようとしたが、その時の俺の顔はいつも通り笑っていただろうか。
なるべくそんな心の内が知られない様に明るく返事したつもりだったが、上手く躱せただろうか。
なんて、しょーもないことを考えながら1人なまえの先を歩いていく。
すると、急に後ろの女の子に左腕を掴まれて引き止められる。



「…陽介」


「や、だからそんな事気にしてねー…」



言い終わる前に、左手を思いっきり引っ張られてなまえの柔らかな何かが俺の頬に触れた。
自分の身に一体何が起きたのかすらもわからないほど一瞬で、それでいて予期せぬ事をされたことに気付くまで、少々の時間がかかった。
だって、今のこれは。



「お、おまえ…意外と大胆なんだな…」


「…なんか、花村が不服そうだったから」



少しぶっきらぼうにそう言ったなまえの頬はほんのり赤く染まっていて。
なんだ、結構可愛いとこあんじゃん。



「なぁ、なまえもう一回!今度はこっち」


「何言ってんの…もう一回とか、ないし」



チャンスとばかりにいつもよりなまえにぐっと近付いて、自分の唇に人差し指を当てさっきの行動を促す。
けれど彼女は顔を真っ赤にして恥ずかしいでしょ、と呟くとふいとそっぽを向いてしまった。
いやいや、俺の彼女可愛すぎでしょうよ。



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