マルチトレインで14勝したトレーナーがいると連絡が入り、すぐにシングルトレインを降りてマルチトレインに乗り換える。
クダリの方が早く来ていた様でホームのベンチに座って暇そうにしていた。



「クダリ、待たせてしまいましたね」


「ううん、今日ダブルトレイン全然挑戦者いない、暇なだけ」



マルチトレイン発車時刻になり、発車合図がホームに鳴り響く。
1両目に乗り込んだとき、ふと昨日の疑問が浮かんだ。
昨日ダブルトレインの整備士は欠勤だったのか、とその疑問をクダリに聞く。
クダリ曰わく、昨日のダブルトレインは破損が激しく整備士もお手上げだった時、それを1日で直した優秀な整備士がシングルトレインにいた事を別の整備士が思い出してクダリが声を掛けた、ということだったらしい。



「それにしてもナマエ凄い、作業員の人集めたらすぐ直してくれた」


「えぇ、彼女は本当に優秀な方です」



別に自分の事を褒められている訳でもないのに何だか誇らしかった。
自分の事の様に嬉しいとはこういう事を言うんだろう。
それが思わず顔に出ていたのか、それを見逃さなかったクダリが私の顔を覗き込む。



「ノボリ、もしかしてナマエの事好き?」


「そ、そのような事は…」


「ノボリ?」


「…職場に私情を持ち込む訳には参りませんので」


「…へぇー、そっか」



クダリがいつも以上に口角を吊り上げてにたにたと笑う。
否定の言葉が出なかった自分に自分で驚く。
クダリが言うように私は彼女の事を無意識の内に意識していたのだろうか。
考えただけでも顔に熱を持ちそうだ。
だが今は勤務中。
サブウェイマスターたるものしっかりしてなければ、とぐっと感情を抑え込む。
あぁ、ちょうど良く挑戦者が来てくれた。




back / next

cover
top