終電を車庫に入れればナマエさまとそのサンダースが来るのが当たり前になっていた。
終電を車庫に入れてしまえば私の1日の仕事は終わるのだが、今では彼女に会って、彼女を見届ける迄が私の仕事となったも同然だった。
そんな当たり前が急になくなるとなんだか無性にそわそわとしてしまう。
先程は休憩室で休まれていたし、早退をしたとの連絡もなかったはず。
いろいろ考え出すと、何故か不安ばかりが襲う。
そんなときだった。
金属が擦り合わさるような音と鋭い鳴き声が横を通り過ぎ、風で帽子が飛びそうになる。



「はぁ、すいません遅れてしまって…」


「ナマエさま、」



ありがとうと礼を言い、乗ってきたエアームドを撫でてナマエさまがボールにしまうとタイミング良く独りでにサンダースがボールから光に包まれ飛び出てきた。



「少々心配致しました、体調でも崩されたのかと」


「全然見ての通りです、ただ…クダリさん、でしたっけ?白いコート着た方にダブルトレインも見てほしいと言われてそれで…あ、言い訳ですよね」


「クダリが?…そうでしたかそれならば仕方ありません」



何もなければそれで良い。
ほっとした気持ちとは裏腹にどこか心の中にもやりとしたものが生まれた。
今日のダブルトレインの整備士は欠勤だっただろうか。
その間にも彼女は自動ドアを開け閉めしたり、ライトをパチパチと点けながらいつもどうり点検をしていく。
勿論、彼女のサンダースもあの後ナマエさまの側で仮眠でも取ったんだろう。
元気に走り回りナマエさまのサポートに尽くしていた。
特に異常はなかったと彼女から伝えられ、礼を述べようとするとナマエさまはあ、と声を漏らした。



「これ、ノボリさんのコートですよね?すいません、お返しします」


「あぁ、そういえばそうでしたね」



毛布探すの面倒なくらい眠くって、と彼女は苦笑いした。
コートだけ渡されると、ナマエさまは腕の時計を確認してスーパーシングルの点検にエアームドで急いで行ってしまった。
あれだけ忙しければ眠くて当然だ。
渡されたコートに手を通すと私とは違う、仄かな甘い香りが漂った。
私でなければ彼女、ナマエさましかいない。
その匂いにどこか安心を覚え、また胸の奥の方でどくどくと心臓が動き出す。
ふと我に返ると顔が火照り、手の甲で熱を冷まそうとしても熱くなるだけだった。




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