今日最後の20戦目を勝ち抜いてきたお客様は私達の良く知るトウコさま。
朝はあんな出来事があったが、これまではなんとかその雑念を振り切ってきた。
だが次第にこれがシングルトレインの最終電車であり、このバトルが終わると私は終電を車庫に入れて彼女に会うことになるとわかると気が気でなかった。
サブウェイマスターたるもの、私情を職場に持ち込むなど言語道断。
この様な邪念に負けてバトルをおそろかにする事はあってならない。
そう自分に強く言い聞かせてバトルをしたつもりでいたのに。



「…!ギギギアル」


「私の勝ち、ですねノボリさん」



心の中の葛藤の瞬間を彼女に突かれトウコさまとのバトルで敗北という駅に到着したのは私だった。
いくらシングルトレインでは手を抜くといえどもこれは上の空過ぎた。
私のせいで倒れてしまったギギギアルを申し訳なくボールに戻す。
ダストダスにイワパレスにもこのように不甲斐ない主人で本当に申し訳ない。
トウコさまもボールにポケモンを戻すと私を不思議そうにじっと見た。
言いたいことはなんとなく、わかる。



「どうかしたんですか?なんか呆気なかったですけど」


「何もございません、わたくしはいつも通りにございます」



ほんとかなぁ、なんて疑う目で私を凝視するトウコさまに私の気持ちがバレてしまうのではないかと心の中で冷や汗をかく。
どうしてこういう時に限って顔見知りが来るのだろうか。



「…もしかして好きな人でも出来たとか?」


「…何を仰いますか、そのようなこと」


「あ、ノボリさんそういうの興味なさそうですもんね」



くつくつと悪戯っぽく笑って見せたトウコさまにはきっと完全に見透かされていた。
動揺したつもりも表情に出したつもりもなかったのに。
シングルトレイン終着駅にこの終電が滑り込み乗客とサブウェイトレーナーを次々と降ろすとトウコさまも頑張ってください、などと謎の励ましを頂き手をひらひらと振り1両目から降りていった。
私はそんなにわかりやすい人間だったのか。
そんなことを少し考えながら、私は既に空っぽになった車内をゆっくりと巡回した。




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