あれから数日が経って私達はお付き合いすることになったが、端から見ればそんな関係などこれっぽっちもわからないような、お互い変わらない接し方のままだった。



「ナマエさま、」


「あ、ノボリさんお疲れ様です」



シングルトレイン終着駅で蛍光灯を抱えて歩くナマエさまに声をかけると、ふわりと笑い掛けてくださる。
すると側を歩くサンダースが此方に向かって来たのでしゃがんで頭を撫でてやると、嬉しそうに一声鳴いた。
別にどうって事もないような、たったこれだけの事なのになんだか幸せな気分で満たされた。



「そういえばナマエさま、先程お客様からミュージカルの招待券を頂いたのですが……ご一緒に如何でしょう?」


「ミュージカルですか、良いですねあたしも行って良いんですか?」


「勿論でございます」



今晩にでもお誘いしようと思っていたところです、と言うとサンダースと顔を見合わせ喜ぶ。
そんな彼女を見ているだけでも自然と口元が緩んだ。



「あ!ノボリ笑ってる!」


「…クダリ、何故貴方が此処に」


「なになに?デート?良いなぁ、僕もミュージカル見たい!あ、ねぇねぇノボリと付き合ってるんでしょ?ちゅーとかぎゅーっとかしてもらった?」


「クダリ…!何をナマエさまに聞いておられるのですか!」



余計な事をべらべらと質問するクダリに1つ拳骨をお見舞いしておく。
込み上げてきた恥ずかしさに手加減をするのを忘れ、その痛みに頭を抱えてしゃがみ込むクダリ。
こんなところをほっつき歩いていないでさっさとダブルトレインに戻りなさい、とクダリに説教する光景を見て、ナマエさまは肩を竦めて笑っていた。
サンダースも可笑しそうにけらけら笑う。



「言われてみればあたし達世間でいう恋人らしいこと、してないんでしょうね」


「…貴女様が、しろというのなら…わたくしはいつでも致します」



その言葉にきょとんとしたナマエさまは、ぼんっと効果音が付きそうな迄に顔を赤くされ、しどろもどろに今は遠慮しておきます、なんて言うから少し笑ってしまった。





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