最初にナマエの恋人を見たとき、僕は目がおかしくなったかと思った。
だってちょっと、本当に人間なのかなって思っちゃって。
目には光もなくて口はへの字のまんま、無機質にしか見えない肌に機械みたいな単調な語り。
だからこんな人にナマエが、と思うと言葉にはしきれない、謎の感覚を覚えた。
ナマエの恋人なんだから、ナマエの事を持ちかけたらきっと嫉妬とかするのかなって、ちょっと挑発的にしてみたけど表情も口調も、何にも変わらない。
このノボリという人、話してみてもロボットみたいだ。
だけど僕はしっかりとこの目で見た。
ノボリさんと話すナマエはとっても嬉しそうで、なんだか眩しかった。
僕が見たことないような楽しそうなナマエの表情。
ふと、その時見たノボリさんも楽しそうにナマエと話す。
失礼なこと、考えちゃったな。
ノボリさんだって、好きな人の前ではやっぱり楽しいって顔に出てるんだ。
だって人間なんだもん。



「ノボリさん、」


「何でしょうか?」


「ナマエを、よろしくお願いします」



帰り際、ナマエがいない間に僕はそうノボリさんに言った。
なんのことやら、と首を傾げるノボリさんに小さな声で、アイツの事目一杯幸せにしてやってください、と一番言いたかった事を伝えた。
ノボリさんは僕の言葉を理解すると、えぇ必ず、とふと笑った。
あぁ、この人ならナマエの事を任せられるって。
長年付き合ってきた僕にさえ出来なかった事、この人はやってくれると確信した。
どんどん先を行くナマエを隣で一緒に歩くのは僕じゃないとノボリさんは僕に気付かせてくれた。



「ヒビキさま、是非またバトルサブウェイお越しください」


「はい、今日は楽しかったです、ノボリさんとも会えて」



でも、僕はもう此処には来ない。
僕は今日此処に長年想い続けた気持ちを置いて行く事に決めた。
貴方にナマエの幸せを託したんだ。
もう、来る用事なんてないんだ。




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