「さっぱりした…ノボリさんお先に失礼しました」
「いえ、お気遣いなく」
シャワー室から帰ってきたナマエさまをなるべく見ないようにしよう、そうは思っていたもののやはり気になってしまう。
設置されている小さな冷蔵庫から嬉しそうにサイコソーダを取り出すナマエさまの後ろ姿が視界の隅に入った。
Tシャツに短パン、タオルを首から掛けてサイコソーダを飲み干すナマエさまは女性というよりももはや男性の様であったが。
いや、いけない。
ナマエさまのお姿に見とれる暇があるならこの紙の山を何とかしなくては、と自分に言い聞かせる。
ナマエさまはそんな私の気も知らず、残ったサイコソーダの瓶を長机に置き、また先程迄いた私の向かえのソファに寝転がる。
普段は作業着ばかりな故、滅多に見ることはないそのソファの上に投げ出された短パンから覗く長くてしなやかなナマエさまの脚に嫌でも目が行く自分が嫌で仕方なかった。
「セーフ、わざとくらす間に合った」
「…お好きなのですか、わざとくらす」
「いや、今日は偶々見たくて、どうせ暇ですし、あ…ノボリさんは仕事中だっていうのにすいません…」
「いえ、見ていて下さって結構ですよ」
自分の気を紛らわす為にテレビの話題を振ってはみるが、どうにも紛れなかった。
私はこんなに困った男だっただろうか。
何故気付いてしまったのだろう。
私達今晩2人きりで過ごす、などということに。
お付き合いしてるとはいえ、まだ恋人らしいことを何一つしていない私にとってはこの状況をどうしたら良いかわからなかった。
「…わたくしも少しシャワーを浴びて来ることにします」
「あ、そうですか?それじゃあごゆっくり」
逃げる様にナマエさまのいる部屋から出て来たが、目の裏に焼き付いて離れないのはナマエさまの先程のお姿。
そんな如何わしい考えを振り払う様に頭を横に振り、脱衣場でYシャツを脱ぎ捨てた。
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