「おや、何故貴方様がいらっしゃるのですか?」



14勝されたお客様がいると連絡が入り、ホームで停車するシングルトレインの1両目に乗り込こむと、扉が閉まり発車する。
すると座席の横からひょこひょことナマエさまがいつも連れているサンダースが此方に向かってきた。
さっきバトルをした時に降り損ねたのだろう、主人を探し車内をうろうろとしていたようだ。
しかし、ここはバトルサブウェイ。
電車に乗ればバトルが始まる。
きっと座席横でひっそりと降りるタイミングを待っていたに違いない。
このままこの電車に乗っていれば、すぐに終着駅まで向かう為、彼を1両目で自由にさせておいた。
結局今回は20戦目までで全てのお客様が降りてしまった様で、私のサブウェイマスターとしての仕事が無くなってしまったまま終点で降りる羽目になった。
だが今回ばかりは好都合、イッシュ地方のポケモンしか見られないシングルトレインに他の地方のポケモンが、その上私の手持ちでもないポケモンが乗っているとなると少々面倒である。



「降りますよ、サンダース」



座席に登りうろうろとしていたサンダースをひょいと抱えて電車から共に降りる。
終着駅が持ち場の駅員達は、見慣れないポケモンを抱えるボスをしげしげと見ていたが、整備士達の休む奥まった部屋に向かうのを見届けると納得したようだ。
休憩室に入ると腕の中にいたサンダースは身軽に飛び降り主人の元へ向かい、すぐ側に体を丸めて横になった。
そのナマエさまはというと少し広めのソファーに何も羽織らず、整備士のつなぎのまま深い眠りについていた。



「何も無しでは風邪を引かれますよ」



声を掛けても寝息は止まることもなく、そのまま放って置く訳にもいかないからと毛布等を探したがそんなものはなさそうだったので仕方なく自分のサブウェイマスターのコートを脱ぎ彼女にかけた。
そういえば、ナマエさまが休まれているのは初めて見る。
人がいないことを良いことに彼女に限りなく近付いてみる。
あまり気付かなかったが、睫がとても長い。
眠そうな瞳を閉じると綺麗な目尻が際立ち、薄ピンクの唇はとても柔らかそう。
そんな事を考えていた自分にはっ、と気付くと顔が自棄に熱かった。
体を横にしていた筈のサンダースが起き上がり私を威嚇する。



「…わたくしとしたことが、早く仕事に戻りましょう」



休憩室をすぐに出て、深く息を吸ってもまだ顔の熱と胸の奥の方で早まる脈は収まらなかった。




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