ナマエと夕食をとっていると、彼女にジムリーダーについて聞かれた。
きっと、昼間の話のことだろう。
ナマエは、バトル関連のことはあまり詳しくなかった。
ポケモンのことも、カンムリ雪原に生息している種類くらいしかよくは知らなかったようだ。
確かにここでは、バトルとは無縁の生活だった気がする。
「ガラルリーグはマイナーとメジャーってクラスがあって、メジャーにも強さの順番があるんだ」
「カブさんがいるのはメジャークラス?」
「前まで、ね」
食事を終えてから、テーブルに何冊か本と雑誌を広げながらそんな話を始めた。
たまたまここに来るときに暇つぶしに買った雑誌に、ガラルリーグ特集が組まれていたので説明はしやすかった。
現ジムリーダー達の写真や得意タイプ、相棒のポケモン達に、インタビューなんかも載っててかなり助かる。
この人が今のチャンピオン、この人はフェアリータイプが得意、などと知った人達を改めて紹介するのは少し妙な気分だった。
「…ピオニーさん?」
「本当はここに来るはずだった人だね、彼もジムリーダーなんだ」
ピオニーくんのページに目が留まったナマエは、僕を不思議そうに見た。
元々ここに来るはずだった人の正体に、少し驚いたような顔をした。
まぁ、無理もないだろう。
それにしても、ピオニーくんの紹介ページは見開きで、写真も文章も盛りだくさんだ。
さすが、鋼の大将の愛称で人気を誇るジムリーダーだけある。
「カブさんだ」
「この頃はまだマイナーに落ちたばかりだから、肩書きだけはジムリーダーかな」
マイナークラスのジムリーダーも、1ページ程度だが紹介はされていた。
それでも、メジャーのジムリーダー達に比べれば至って簡素だった。
ナマエは、僕のページを開いたまま、じっくりと記事を読んでいるようだ。
時折ふと、笑顔を見せる。
このときの取材で何を答えたかなんて、何も覚えていないけれど、そんなに面白いことなんて書いてないだろう。
改めて、こういうのを誰かにしっかりと読まれている、という事実がわかると何だか落ち着かない気持ちになった。
手元の適当な本を開いて、読んでいる振りをして誤魔化す。
「カブさん、恋人とか、いるの?」
沈黙を破ったナマエから出てきた質問は、僕が微塵も予想していなかった質問だった。
思わず、手に持っていた本を床に落とす。
この取材は、そういう話題を振られた時のものだっただろうか。
「…い、いないけど、なんで?」
「かっこいいし有名人だから、もしかしていたりするのかなって」
何となく、とナマエは困ったように眉を下げながら笑った。
まぁ、この類の話には縁がないのか、興味がないのか。
そういうのはないよ、と正直に言ったが、何故か信じてもらえなかった。
本当かな、と雑誌越しにこちらを疑うナマエに、否定の言葉が強くなる。
誰だって、気になっている人に恋人がいるなんて、思われたくない。
けれど、何を、そんな必死になってるんだろう。
びっくりして固まるナマエにごめん、と謝りながら静かに座り直した。
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