今日の彼女は、朝から調子が良くなさそうに見えた。
それでも今日も、いつもの日常が繰り返されるとばかり思っていた。
ナマエの持ってきたお昼ご飯をポケモン達と一緒に食べて、彼女とランプラーが村へ帰っていくのを見送る。



「それじゃあ、戻るね」


「ありがとう、気を付けて」



何故か、その日だけはそう言った。
いつもは、そんな言葉を言ったことはなかったのに。
しかしその時は、そこまで気には留めなかった。
きっと体調が悪そうだったから、無意識にそんなふうに言ったんだ。
それくらいにしか考えてなかった。
小さくなって見えなくなったナマエとランプラーに背を向けて、いつもどおりトレーニングを再開した。











「ランプラー?どうかしたかい?」



なにかに気付き、マルヤクデがゆっくり歩いていく方向を見れば、急いで飛んでくるランプラーが見えた。
僕を見つけると、じたばたと腕を振るい、顔の奥で透けて見える青白い炎は、これまで見たことがないくらい激しく燃えていた。
何かを必死に訴えようとしている、のだろうか。
戸惑う僕の腕に、平べったい腕を絡ませるとランプラーはぐいぐいと引っ張る。
そういえば、ナマエの姿はない。
さっき自分の口から咄嗟に出てきた言葉に、嫌な予感がした。



「ナマエ…!」



悪天候の氷点雪原で、雪に埋もれた黒い物体が彼女だとは、思いもしなかった。
ランプラーが、今にも泣き出しそうにナマエの顔の近くに寄っていく。
主人をなんとか助けようとしたのだろう。
深く積もる雪には、彼女の身体を引き摺った跡が悲しく残っていた。
よく頑張ったね、とランプラーを撫でてあげると、とても悲しそうに鳴く。
彼女の腕を肩に回し、担ぐようにして状態を起こした。
顔は酷く青白く、触れた身体から伝わる鼓動はあまりにも弱々しかった。



「ランプラー、先に村長さんのところに行ってナマエのことを伝えるんだ、わかるね」



心配そうにナマエを見上げるランプラーにそうお願いすると、力強く頷いて青白い炎を吹き上げる。
飛んでいくランプラーを見送ると、身体が冷え切りぐったりとした彼女を抱き抱え、ウインディの背中に乗せてもらう。
僕の不安を煽るように、氷点雪原の吹雪の激しさは増す。
どうか間に合ってくれと、願いながら自分の着てきたベンチコートで彼女を包み、抱き寄せた。




back / next

cover
top