「ナマエ、調子はどうだい?」
「昨日よりは良いみたい」
それは良かった、とベッドの側に置いたままの小さな丸椅子に腰を掛ける。
懐かしいものを鞄から見つけたので、今日はそれを持ってきた。
多分、こっちに来るときに入れてきたことをずっと忘れていたのだろう。
これを見つけたとき、昔聞いたある話を思い出した。
そしてこれが彼女のためになればと、あげたいと僕は思った。
手元の星型の飾りを、彼女のベッドのヘッドボードにそっと掛ける。
すると、不思議そうに彼女はそれを見つめた。
「ウィッシュメーカーっていうんだ、ホウエンにあるお守りだよ」
「キレイなお守りだね」
「僕の故郷の伝説に、千年に一度目を覚まして願いを叶えてくれると言われているポケモンがいるんだ」
ジラーチっていうねがいごとポケモンでね、とナマエに教える。
すると、初めて聞くと彼女は言った。
多分この話を、ガラルで知っている人はほとんどいないだろう。
ホウエンでも、あの太古の陸と海の伝説の方が圧倒的に知名度があるくらいだ。
掛けたウィッシュメーカーをもう一度手にして、ナマエにお守りの使い方を伝えた。
ジラーチが目を覚ます千年彗星が見える7日間、毎晩願いを込めて1つずつこのお守りの星を折り込んでいく。
まだ僕が子供の頃に買った時、お店の人がそう言っていた。
そして、その人はこうも言っていた。
「7つの夜が終わるとき、君の願いは叶う」
「…素敵なお話」
どんなお願いをしようかな、とナマエは考え始めた。
その横顔は、ベッドサイドの暖かい色のライトに照らされて、そのまま消えていなくなってしまいそうなくらい弱々しく儚く見えた。
しばらくしてあっ、と何かを思い付くと僕の手元のウィッシュメーカーに手を伸ばし、星を掴むとぱちんと、1つ折り込んだ。
「カブさんがジムリーダーになれますように」
ナマエのねがいごとに、僕は目を丸くした。
この期に及んでも、自分の願いではないのか。
君のためを想って渡したのに、これでは意味がなくなってしまう。
「千年彗星は見えないけど、ジラーチは叶えてくれるかな」
「…叶えてくれるよ、きっと」
もう寝たほうがいい、と布団をかけ直して彼女を寝かせる。
はぁい、と間延びした返事をして眠りに就いたナマエをそっと見守った。
「僕なら…君が元気になりますようにって願うよ」
ヘッドボードに掛かる、1つだけ星が折り込まれたウィッシュメーカーを見つめる。
目元に溜まる涙のせいで、視界が霞む。
「好きだよ、ナマエ」
「だから、早く元気になってくれ」
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