ナマエにあげたウィッシュメーカーは、6つの星が折り込まれていた。
あれから6日も経ったらしい。
僕もウィッシュメーカーを見つめては、柄にもなく毎日そっと願ってみた。
でも、きっと僕の願いは叶わないだろう。
ジラーチだって、同時に2つの願いを叶えてあげるほど暇じゃないはずだ。
現に、彼女の体調は良くなるどころか、悪くなる一方だった。
それなのに、今日はカンムリ神殿までにんじんを届けに行くことになってしまった。
彼女を家に残していくことがどうにも気がかりだが、彼女はそれでもにんじんを届けてほしいと僕に言った。
この際だから、豊穣の王にも1つ彼女のことを頼んでみようかと思う。
ナマエから聞いた話だと、王さまは願いを叶えてくれるポケモンではなさそうだが、あんなに言い伝えを信じてくれているナマエのことだ。
右の手でもかざして、彼女を元気にしてはくれないだろうか。
「みんな、今日はカンムリ神殿まで走り込みだよ」
そう言うと、ウインディ達はフリーズ村から一斉に駆け出していく。
僕も遅れを取らないよう、彼らの後を追いかけた。
ナマエとランプラー、2人と1匹で並んで歩いて、彼女と仲良しのポケモン達に案内されながら向かった道のりを駆け抜ける。
今日は1人と3匹になってしまった。
前みたいに、景色を楽しんでいる余裕はどこにもない。
こんなに走り込みのトレーニングが辛いと感じたことは、今までになかった気がする。
息苦しいのは、きっと寒い中全力で走っているからだ。
それも、これも、全部カンムリ雪原のせいだと思いたかった。
「王さまは、彼女を、助けてはくれないのかい…」
開けた神殿の真ん中で、息を切らしながらそう呟いた。
けれど、誰も返事はしなかった。
わかっていたけれど、何かあっても良いんじゃないかと期待していた僕もいた。
マルヤクデが僕の隣で鳴くとはっ、と目的を思い出す。
にんじんを、彼女の代わりに届けにきたのだった。
ウインディの首元に結んだスカーフから、くろいにんじんを取り出した。
前に馬宿のかごに入れると言っていたことを思い出し、辺りを見渡す。
それっぽいものは見つけたが、かごは何故か空っぽではなかった。
「やみのいし…?」
確か前に、たまにお礼の品物が入っている、とナマエが言っていた。
でも使い方がよくわからないの、と彼女が見せてくれたお礼の品々は、ぎんのおうかんだったり、こおりのいしだったりと、どれもなかなか手に入らない貴重な道具ばかりだった。
今日はこれをくれるというのか。
だとしたら豊穣の王はやみのいしで、どう彼女を助けろというのだろうか。
手元のやみのいしを一通り眺めてみたが、僕にはこれをくれた理由がわからなかった。
服の裾をぐいぐいと引っ張るキュウコンに、急げと言われている気がして、かごにくろいにんじんを入れる。
ありがとう、とそびえ立つ大木になんとなくお礼を言って、神殿を後にした。
来た道を急いで帰ろうとすれば、僕とポケモン達の横を大きな黒い影が、音もなくさっと通り過ぎていく。
それを目で追えば、いつか聞いた、尻尾の長い鳥ポケモン。
「本当に、いたんだ…」
こちらを横目で見て、悠々と飛び去っていく紫色のフリーザーは、確かに冷淡だった。
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