俺様は今、エンジンスタジアムに来ている。
用事は先のワイルドエリアでの件についてだ。
ワイルドエリアに共に隣接するエンジンシティとナックルシティ。
この2つの街のジムリーダーには、ジムミッションの対応、リーグ戦、ジムの管理等の他に、ワイルドエリアの監視も一部担うことがある。
特にジムミッションが始まったこの時期は、まだ慣れないポケモントレーナーが迷ったり、実力以上のポケモンと対峙して襲われたりと、まぁいろいろと事件も事故も起こるわけで。
この前のナックルシティ側で起きた事故の報告のためにカブさんを訪ねた。
「っと、誰もいねえの…?」
人が疎なエンジンスタジアム。
その日は、珍しく受付にいるジムトレーナーも不在だった。
ジムミッションが始まってから、すでにエンジンジムは忙しいのだろう。
なんと言ってもここは、ジムミッション最初の関門。
ここまでは挑戦者の大半が訪れてくる。
シーズン最後の方に片手で数える程の挑戦者しか来ない、なんてうちのナックルジムとは大違いだ。
普段は受付にいるジムトレーナーに一言声を掛けるが、ジムミッションの準備や対戦で大変な時期に、カブさんにもジムトレーナー達にも変な手間を取らせたくない。
エントランスの隅っこで目立たないようにひっそりと佇む、事務所へと繋がる扉からそっと中に入った。
開けると同時に、何かの光がちらちらと視界に入ったが、その時の俺様は、このことを何とも思ってなかった。
「…おかしいだろ」
そう気付いたのは、扉を潜ってからもう20分も過ぎた時だった。
いくらスタジアムが広いといえど、本来ならとうに着いているはずの事務所に一向に辿り着かない。
前にカブさんに案内してもらった時は、ものの5分くらいで着いたはずだったのに。
それに。
「さっきから同じ道、だよな…?」
どう歩いても、最初に入ってきたあの扉の前に戻ってきてしまう。
それに、ここに入ってから、人が誰もいない。
普通20分も歩いてりゃ、どんなに忙しくったってジムトレーナーの1人くらいすれ違うだろうに。
なのに、何故。
「どうなってんだ、今日のエンジンスタジアム…」
俺もあんまり暇じゃねえんだけどな。
まぁ、カブさんとこほどじゃねえけど。
そう言って、いつもの癖で頭に両手を回した時だった。
「…っ」
ああ、まただ。
関係者以外立ち入り禁止の扉を開けた時にも見えた、あの光。
しかし今度はさっきのように、ちらちらと視界に映るだけではなかった。
不気味な色の光がゆらゆら揺れたと思えば、目の前でパッと弾けるように一瞬眩く光る。
これじゃあ、まるで。
「…あやしいひかり、かよ」
そう呟くと、何故か急に背筋がぞくりと冷えた。
ここには、何か、いるのか。
咄嗟に後ろを振り返っても、先程自分の入ってきた扉しか見えなかった。
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