結局毎日何をするわけでもなく、カンムリ雪原に来てから3日経過した。
本当に何をしにここに来たのか、自分でもよくわからない。
この数日の間、あえて僕がしていた事といえば、彼女とランプラーをずっと見ていた。
決して変な意味では、ない。
2人は近所のポケモン達をお世話してあげたり、村の畑の手伝いをしたりして毎日暮らしているようだった。
あとは、豊穣の王と呼ばれているポケモンの像の雪を退けたり、掃除をしたり。
それは、都会の忙しく騒がしい毎日とは違い、ここは静かにゆっくりと時間が過ぎているようだった。
他に気付いたことといえば、ナマエはどうも身体が丈夫ではなさそうだ。
外から帰ってくると、よく咳き込んではランプラーが心配そうに彼女の顔の周りをうろうろとしている。
僕も何度か声はかけたが、彼女はいつものこと、だとか大丈夫、としか言わなかった。
今日も外に出かけるといって、ポケモンの像の雪を退けているのが窓から見えた。
が、その後うずくまるようにしゃがみ込んでいる光景が目に入る。
体調が悪くて、そうしているわけじゃないならいいのだが。



「カブさん?どうかされましたか?」


「あ、いや…ちょっと外にも出ようかと」



しゃがみ込んでいた彼女は、元気そうには振る舞っていたが、寒さで鼻の頭は真っ赤になっていた。
なんとなく気になって外に出てきたものの、僕はご機嫌なランプラーの横でポケモンの像の雪を払うナマエを見ているだけだった。



「気になりますか?このポケモンの像」


「…いや、まぁ」



僕の視線がポケモンの像にあると思ったのか、そう問いかけられた。
曖昧な返事を返すと、彼女は徐にこの像についての話を始めた。
これは村に伝わる伝説、豊穣の王の像だという。
豊穣の王は遥か昔、カンムリ雪原を統べていたポケモンだそうで、この像のように馬のポケモンに乗って雪原を駆けていたそうだ。
だが、今は伝説というか、村人達もおとぎ話に出てくる架空のポケモンという認識の人が多いらしい。



「でも、私は少なくとも馬のポケモンは何処かにいるって信じてます」


「…どうして?」


「カンムリ神殿ににんじんを持っていくとなくなるから」



彼女曰く、古くから村に伝わる歌の詞にある、"黒い馬が黒いにんじんを食べた"という一節に心当たりがあるらしい。
それは、昔豊穣の王とその馬が暮らしていたとされるカンムリ神殿の馬宿のかごに、黒いにんじんを入れておくと、必ずなくなっているからだと言う。



「まぁ、黒い馬が食べてるところは見たことがないので、もしかしたら違うゴーストタイプのポケモンが食べているだけかもしれないですけれど」


「…いるよ、きっと」



いい加減な返事だな、と自分でも思ったが、ナマエははい、と嬉しそうに笑った。
つられて横にいたランプラーも、くるくる回りながら一声鳴く。
外は寒いはずなのに、彼女とランプラーを見ていると、さほど気にはならなかった。




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