「僕も、一緒に良いかな…?」
「えっ?」
いにしえの墓地に出かけると行ったナマエに、僕はそう返事をした。
彼女は驚いた。
それもそのはず、3日も何もせず家にいたやつが急に付いていくと言うのだ。
驚いても無理はない。
ダメなら良いんだ、と言おうとすると彼女は、行きましょう、と笑ってくれた。
ランプラーにも許可を求め問いかけると、とても嬉しそうに僕の周りをぐるぐる回り始めた。
ベンチコートの中もしっかりと着込み、彼女とランプラーと家の外へと出る。
今日も、フリーズ村は雪が舞っていた。
「…すごい」
「ガラルでは珍しいポケモン達も住んでいるそうですよ」
氷点雪原を下っていくと、見渡す限り緑が広がる。
雪もすっかり止んでおり、暖かい日差しが降り注いでいた。
そこでは、ニドラン達やバイウールーがのんびりと過ごしているのが見える。
急になにかの影に覆われ空を見上げれば、プテラ達が悠々と飛び去っていく。
確かにワイルドエリアではあまり見かけないポケモン達が、そこではのびのびと暮らしていた。
彼女とランプラーの後を追って歩いていくと、角が横に生えた黄緑色のポケモンが木の陰から見えた、気がする。
ホウエンでも見たことがないが、あれもここに住んでいるポケモンなんだろうか。
「ここから先がいにしえの墓地です」
「さすが、ゴーストタイプばかりだね」
そこは、古びた小さな墓石が立ち並ぶ、なんとも寂しげな場所だった。
周りには、ヤバチャやボクレー、ランプラー達といったゴーストタイプのポケモン達がふらふらと彷徨っている。
彼らは、ナマエが墓地にやって来たことに気付くと、列を成して彼女とランプラーに付いていく。
彼女より遥かに大きなドラパルトまでやってきた。
これは、大丈夫なのだろうか。
思わずポケットに入れてきた、ウインディのいるハイパーボールを握りしめる。
「そんなに怖い顔をしなくても大丈夫」
「えっ…」
「この子たちは、お手伝いしてくれるだけなので」
墓地の裏側にある薄暗い場所に、小さな畑があった。
畑からはいくつもの紫掛かった葉っぱが出てきており、それがナマエの言っていたにんじんだった。
カンムリ雪原のにんじんは、2種類あるそうだ。
白くて冷たいにんじんと、黒くて細長いにんじん。
種を植える場所により、育ち方が変わるというなんとも不思議な植物らしい。
かつてはどちらもここの名産品だったらしいが、今はもう村の人達でも数人しか作っていないそうだ。
今日は食べ頃になったくろいにんじんを、収穫するためにここまで来たと言う。
「ランプラーが大好きなんです」
「この黒くて細長いのが…?」
「意外と美味しいんですよ、早速今日の夕食に使いましょう」
ナマエに言われたとおりにんじんを引っこ抜くと、紫掛かったような黒色でひょろひょろと細長いにんじんが出てくる。
僕はあまり見たことのない、食べ物だった。
じっ、と僕が抜いたにんじんを眺めていると、彼女のランプラーが少し興奮気味に、にんじんの周りをうろうろし始めた。
そんなに好きなのか。
僕達に着いてきたここのランプラーやボクレーも、にんじんを抜こうと頑張っている。
野生のポケモン達と人が一緒に収穫をしている光景が、なんとも不思議で、どこか温かみを感じた。
エンジンシティにいては、見られなかったものかもしれない。
収穫が終わると、彼女は持ってきていた小さなかごに、にんじんを5本ほど乗せるとそっと1つの墓石の前に置いた。
「手伝ってくれたお礼です」
「そうか、君たちも好きなんだね」
手伝いをしたゴーストポケモン達が、嬉しそうにかごの周りに集まってくる。
きっと彼女は、こうしてここのポケモン達と協力してきたのだろう。
もう少しだけ、彼女達の暮らしを見てみたいと思った。
明日も何か手伝ってみようか、家で何もせずに過ごすよりはずっと良い。
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