今日は、昨日収穫したあのくろいにんじんをカンムリ神殿というところまで届けに行く、と彼女は言った。
無論、僕も付いていくことにした。
防寒着を着込むナマエの隣には、小さなかごに入ったにんじんをぶらぶらと下げたご機嫌なランプラーが浮いている。
昨日と同じように巨人の寝床までやってきたが、今日はそこから東へとさらに歩いて行くらしい。
「アマルルガが迎えに来てくれました」
待っていたと言わんばかりに、アマルルガとアマルスが雪中渓谷の入り口に立っている。
彼女がよろしくね、と手を挙げると、アマルルガはその長い首を彼女の顔の近くまで寄せた。
その横では、アマルスの周りをランプラーがぐるぐると回って、互いにじゃれ合って遊んでいる。
「君を乗せてくれるんだね」
「昔この辺りで具合が悪くなったところをこの子達が助けてくれました、それからよく来てくれます」
優しい子達ですね、と隣で嬉しそうに笑うナマエは、積もった雪に日差しが反射していたからなのか、やけにキラキラと輝いているようにも見えて、思わず目を反らした。
今の僕には、眩しくて仕方がなかった。
その間にも、雪深い上り坂をアマルルガに乗せられて、どんどんと登っていく。
後ろを振り返れば随分と山を登ってきたようだ。
洞窟の入り口までやってくると、アマルルガ達はぴたりと止まる。
どうやら、ここでお別れらしい。
僕もお礼を言ってそっと前足に触れると、彼は嬉しそうに、色が変化する背中のヒレをゆらゆらと揺らした。
「ここからはメレシー達が案内してくれます」
「君達は、野生のポケモン達と随分仲がいいんだね」
「どうしてでしょう、いつの間にか」
ナマエは笑いながら簡単にそう言った。
だが正直相棒のポケモンでも、仲良くなるには時間がかかることがある。
それなのに、彼女は野生のポケモン達と、相棒のように上手くやっている。
いつの間にか、でそうそう仲良くなれるものでもないはずだ。
「野生のポケモンとかあまり気にしたことはありません、困っていたら助ける、力を貸してくれたらお礼をする」
それだけです、と言った彼女の視線の先では、メレシーとランプラーが楽しそうに遊んでいる。
それは、当たり前のことなのに、少しだけ忘れていた気がした。
僕は、頑張ってくれていたウインディ達に、お礼が出来ていただろうか。
ふと、立ち止まってポケットのボールを取り出す。
ごめんね、と小さく呟くと、ウインディのボールは少しだけ揺れた。
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