入り組んだ登頂トンネルをメレシー達の案内により抜けると、雪は降っていないものの、一段と寒さが増した。
朝からずっと歩いているせいなのか、ナマエの息は大分上がっていた。
それでも、大丈夫、としか言わない彼女を神殿へと向かわせる動機は一体何なんだろうか。



「カブさん、見て」



僕は、思わず息を呑んだ。
声を出すことも忘れるくらいの、美しさだった。
白木が立ち並ぶ、真っ白な雪道。
人がほとんど立ち入っていないからなのか、そこには足跡1つなかった。
ここでは何匹ものモスノウ達がふわふわと浮かんでおり、木の間から差し込む光のせいで彼らの撒いた鱗粉がキラキラと輝き舞う。
こんな幻想的な風景が、ガラルにあったのか。



「…すごく、綺麗だ」



素直に、その言葉しか出てこなかった。
あぁ、なるほど。
多少苦労して歩いてきた甲斐がある、と言っても過言ではない。
モスノウ達は待っていたかのように、近付いて来ては、彼女の周りをゆっくりと飛ぶ。
そんな光景に目を奪われて、思わず足が止まった。
すると僕の側にも、ゆっくりとモスノウが近付いてくる。
彼に手を伸ばして少しだけ触れると、指先から冷たい冷気が伝わってきた。
先を歩くナマエに続き頂への雪道の最後の曲がり角を曲がると、どうやら目的地に着いたようだ。
ふと見上げれば、大層立派な建物が見えてくる。
さすが、王さまとも呼ばれるポケモンのいたところというような佇まい。
さっきまでの晴れ模様から一変し、重たい灰色の空から粉雪がゆっくりと落ちてくる。
神殿の入り口を潜ると、思っていた神殿の造りとは少し異なり、大木のそびえ立つ開けた場所だった。



「その者、この地に豊穣をもたらすポケモン、右の手をかざせば草花生茂り、左の手をかざせば畑に実りを授ける」



大木を見上げていると、にんじんを届けたナマエが僕の横に並びそう呟いた。
それが王さまのポケモンなんだね、と尋ねると、はい、と答えた。



「もうおとぎ話だってみんな言いますが、もしお腹を空かしていたら寂しいんじゃないかと」


「君らしい理由だね」


「まぁ、ランプラーのご飯のおすそ分けで申し訳ないですけれど」



でも必ずなくなるので誰か食べている筈です、と自分を納得させるように、うんうんと頷きながら彼女はそう言った。
ナマエがいろんなポケモン達から好かれる理由が、少しだけわかった気がする。



「さぁ早めに帰りましょう、フリーザーは気まぐれなので今日は来てくれないかもしれません」


「えっ!?フリーザーが来るのかい?」


「ご存知なんですか?紫色で尻尾が長くて綺麗な子なんですけれど、なかなか冷淡で…」



僕の聞いたことがあるフリーザーとは特徴が少し違う気がしたが、それは見間違いか、色の表現の仕方の違いかなにかなのだろうか。
それにしても、あの伝説とも呼ばれる鳥ポケモンが迎えに来る彼女はやっぱり何者なんだ…と思いながら、平然と階段を降りて行くナマエの背中を追いかけた。




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