ねえちゃんの買い物に散髪に観光、全てに付き合ってやったら、太陽はすっかり傾き外はだんだんと暗くなり始めた。
結局、1日中マリエで遊んでいたようだ。
飯食って帰るぞ、とナマエに言えば、腹の虫で返事をしてきた。
あまりのタイミングの良さに思わず吹き出すと、ナマエは真っ赤な顔をして言い訳をする。
そんなねえちゃんもなんだか可愛気があって、悪くないと思ってしまった。
「…すごく美味しい!」
「いけるだろ」
最初はびっくりしましたけど、とナマエは小声で付け足した。
行きつけの店の、いつものメニューだ。
まぁ食べ盛りのねえちゃんは、そう思うのかもしれない。
なんてったって、テーブルの上に並ぶのは白飯、味噌スープ、香物だけだからだ。
だが、どれも素材の味が生きていて素朴だが美味い。
目の前に座るねえちゃんが、大きく口を開けて次々と飯を運んでいく様は、いい食べっぷりで見ていて気持ちが良いくらいだ。
そんな様子を見てふ、と笑うとナマエは満面の笑みを返してきた。
「なんか、今日デートみたいですね」
「おじさんなんかとして、どうするよ」
「私は…楽しかったですよ?」
バカ言ってんじゃないよ、と鼻で笑って返した。
咄嗟に、味噌スープを啜って視線を反らす。
なにを言い出すかと思えば、そんなこと。
おじさんが本気にしたら、ねえちゃんはどうするつもりなんだよ。
人の気も知らずに、何事もなかったかのように飯を食うねえちゃんを見てれば、大体察しはつく。
どうせ大した意味も持たせず、そうやって言ってるだけなんだろう。
深く考えるだけ無駄だと、半ば諦めたように溜め息を吐く。
本当に、とんでもないものを拾っちまったな。
「マタ、ヨロシクタノム」
帰り際にいつもくれる、サービスのハートのウロコをナマエに押し付けると、喜んで眺めていた。
帰ってからじっくり見よう、と言いながらバッグに仕舞っているところを見るあたり、ねえちゃんの使い方は多分一般トレーナーのそれとは違うような気がする。
もう、そんなナマエにも随分と慣れたもんだ。
「…変な空」
店を出たナマエが、後ろからぽつりとそう呟く。
言われて見上げれば、どんよりとした分厚い黒い雲がゆっくりとこちらに流れてくるのが見えた。
そんな妙な空に、胸騒ぎを覚える。
「ナマエ、降られない内に帰るぞ」
適当言ってさっさとナマエと、その場を離れるつもりだった。
それなのに、ねえちゃんは俺の声が聞こえていないのか、道路のど真ん中にぽつりと立ち尽くしている。
何故か、アブソルの入ったモンスターボールを、強く握りしめて。
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