妙な空のある1点がキラリと光ると、いつかの新聞で見たような穴がみるみるうちに上空で拡がっていく。
ヤバいやつだと直感的に感じて、下がれとナマエに言った。
だが、ねえちゃんは俺の言葉なんて聞きもせず、アブソルをボールから出して叫んだ。
主人の指示に従い、まもるを繰り出すと同時に、穴から出てきた何かがこちらに激突する。
辛うじて防げたものの、ぶつかった衝撃でぼうふうのような強い風が巻き起こった。
立っているのが、やっとというレベルだ。
なんて無茶をしやがる。
「…テッカグヤ!」
「ナマエ、あいつの特徴は」
ねえちゃんの隣に並び、見たことのないウルトラビーストについて尋ねれば、ナマエはさらさらとその特徴を述べる。
テッカグヤ、最大の特徴は体内に秘める大量の可燃性ガス。
これを巨大な2本の腕から放射することが可能で、主に飛行時、戦闘時に使用される。
そのパワーは、宇宙へも飛び出すことができるらしい。
こいつの生態は見た目通りというか、植物に程近いものだという。
「ならくさタイプか」
「いえ、テッカグヤははがね、ひこうの複合タイプです!」
「その見た目でそんなタイプとはね」
ボールを放ってやると、出てきたペルシアンは不機嫌そうに低く唸った。
俺の合図に合わせて高く飛び上がり、10まんボルトを放つペルシアンに続き、ねえちゃんのアブソルもサイコカッターで応戦する。
2匹の攻撃は確実にバケモンに当たっているはずなのに、弱点を突けているようには到底見えなかった。
はがねタイプを持っているだけあるのか、防御はかなりあると見てよさそうだ。
頭と言って良いのかわからないが、その巨体とは少々バランスの悪い上部をぐぐっと引っ込めると、更にバケモンのぼうぎょが上昇する。
こいつは、ロケットずつきの前兆。
「ナマエ、避けさせろ!」
「アブソル…!」
指示を出すのが一歩遅れ、ねえちゃんのアブソルはヤツのロケットずつきをまともに食らって、後方に吹き飛ばされた。
アブソルの叩きつけられた崖が、バラバラと虚しく崩れ落ちるあたり相当の威力と見た。
あれでは、恐らく立ってはいられないだろう。
俺の予想が正解だというかのように、目の前のバケモンは不思議なオーラを纏い始めた。
「…ビーストブーストが、発動しました」
「くそ、能力が上がったっていうのかよ」
アブソルをボールに戻したナマエは、二番手のポリゴンZのボールを握りしめる。
だが、その手は震え、恐怖に怯えた顔をしていた。
そういえば、ねえちゃんは自分の手持ちをひんしにまで追いやられたことが、ない。
しかも一撃で、ここまで酷く傷付けられたのは初めてだ。
まずい、トレーナーがこんな状態で、まともに戦えるわけがない。
「落ち着きな、ねえちゃんがビビってちゃポリゴンZは戦えねぇよ」
「クチナシさん…」
震えるナマエの左手を強く握ってやる。
怯えた瞳でこちらを見上げるその目をまっすぐ見返してやれば、多少落ち着きを取り戻したのか、手の震えは収まったようだ。
そして、覚悟を決めたようにボールを力いっぱい投げて、ポリゴンZを繰り出す。
「さて、反撃といくかね」
「絶対にここで止めます」
ナマエが天高く指を差しほうでんを指示すれば、眩い光に包まれたポリゴンZはバチバチとその出力電気を上げていく。
その姿は、無力だったと泣きべそをかいていたあの日とはまるで別人だった。
ポリゴンZの放つほうでんは、テッカグヤに確実に効いている。
ねえちゃん、強くなれたじゃねえか。
ひと回り大きくなったねえちゃんの背中を見て、俺は1人満足の笑みを浮かべた。
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