おじさんとねえちゃんで、バケモンを何とか弱らせて追い返すことに成功した。
マリエで楽しく遊んで終わる1日のつもりが、最後の最後にとんでもない目に合った。
まぁ、大きな被害もなく事態を収束させることが出来たのは、不幸中の幸いとでも言えるだろうか。
街の道路と崖が少々陥没して崩れていたような気がするが、そこはご愛嬌ということで。



「…っ滲みる」


「我慢しな」



ソファに座らせ、消毒液をたっぷりと染み込ませた脱脂綿を右頰に当てると、嫌そうに顔を背けるナマエ。
子供のわがままの様に、いやいやというねえちゃんの顎を掴むと、びくりと一瞬肩を震わせたが不服そうにこちらを睨む。
被害といえば、ナマエだ。
知らない間に、その若い顔に切り傷を作っていやがった。
しかも、そこそこ大きいやつ。
バケモンを退散させた後、満面の笑みを向けられた時は、冷や汗がどっと出た。
正直、ウルトラビーストが来たときよりも、だ。
ようやく交番に帰ってきた俺は、ナマエの顔の傷の手当てをする羽目になった。
全く、跡にでもなったら親御さんに怒られちまうっての。
そんなおじさんの気持ちを知ってか知らずか、ナマエは顎を掴まれたまま、眉を下げて申し訳無さそうに尋ねてくる。



「クチナシさん、私…少しは役に立てましたか?」


「十分だっての」



俺がそう言ってやれば、ナマエはそのまん丸の瞳からぼろぼろと涙を零す。
急にそんな風に泣き出すもんだから、慌てて顎を掴む手を離した。
ごめんなさい、と言いながら目元を手の甲で必死に擦って涙を拭うナマエは、悲しくてそうしているようではなさそうだった。



「良かった、良かったです…」



顔を涙でくしゃくしゃにしているのに、ナマエは嬉しそうに笑った。
何があったかは知らないが、財団での事を相当悔やんでいたのだろう。
そんなねえちゃんのべたべたに濡れた頬に、そっと右手を添えて、涙を親指で拭ってやる。
力が抜けたように笑いながらおじさんの手に左手を重ね、ペルシアン達がするのと同じように顔を寄せてきた。
もし、このまま、キスの1つでもしてやったら、ねえちゃんはどんな顔をするだろうか。



「そういうことされちゃ、おじさん困るんだがな」


「ペルシアンは慣れているのに?」


「おまえなあ」



ふふ、といたずらっぽく笑うナマエに、やっぱり口を塞いでやればよかったと、後悔した。




back / next

cover
top