「ああそうかい、そいつは良かったよ」



BEAUTYことフェローチェは、数日後あんちゃんの手によってすべて捕獲されたらしい。
わざわざ電話で報告してくるだなんて、リラも律義なやつだ。
じゃあな、と電話を切ろうとすると、まだなにかあるのか、あの、と電話口から控え目な声が聞こえてくる。



"先程電話に出られた女性…同じ職場の方ですか?"


「…なんでも良いだろ」



今度こそじゃあな、といって半ば強引に電話を切った。
交番の電話は、たまにナマエが出てくれるが、今日ばかりは電話の相手が悪い。
そもそも、そんな話聞いて何が楽しいんだよ。



「BEAUTY…フェローチェは捕獲されたってよ」


「そうですか、良かったです」


「お手柄ってやつだな」



ありがとよ、と言ってソファで寝転がるナマエの頭にそっと手を乗せると、嬉しそうに笑う。
ポケじゃらしで遊んでいたポリゴンZとアブソルも、尻尾を振り嬉しそうに鳴く。
実際、捕獲の際にはナマエの情報がかなり有用になったようだ。
あんちゃんもスムーズに捕獲出来た、と言っていたらしい。



「役に立てるようになったのも、クチナシさんのおかげですね」


「ねえちゃんは元から優秀な学者さんだろ」



でも、というナマエに頭に乗せていた手をぽんともう一度置く。
片方の口元だけを吊り上げ、にやりと笑ってやると、ナマエは少し照れ臭そうに笑った。
起き上がってソファに座り直すと、そういえば、とふと気付いたようにナマエは尋ねてくる。



「さっきの電話の女性、お知り合いですか?」



なにやら親しげに聞こえましたが、とナマエは首を傾げる。
何を聞かれるかと思えば、またそのことか。
揃いも揃って、何故おじさんのそんな話を聞きたいのだろう。
はぁ、と盛大に溜め息を吐いてやると、ナマエは慌てて謝りながら、やっぱり何でもないです、と顔の前で両手を振った。
その片方の手を掴んでこちらに引き寄せると、急に縮まった距離にびっくりしたのか、まん丸の瞳で俺をまっすぐ見つめる。



「なんかあったら、困るのかよ」


「べ、つに、そんなことないです…けど」



耳元で意地悪く言ってやれば、それは真っ赤になった。
多分、予想外の返事だったのだろう。
初めて見たナマエのその表情が、なんだか面白くてにやにや笑ってると、顔まで真っ赤にして俺の手を振り払い、なんですか!と声を荒げる。



「深い意味はないです、ホントに!」


「はいはい」



からかうのはこのくらいにしておいてやろうと、ちらとナマエを見れば、顔を赤らめたまま俯いて少しだけ寂しそうな顔をした。




back / next

cover
top