「おじさんおはよ」


「帰ってきたか、ねえちゃん」



3日振りに見たねえちゃんの姿に、少しだけ口元が緩む。
昨日朝一の船で帰るって連絡したじゃん、というナマエにそうだったか、と適当に返す。
まあ、覚えてはいたけれど。
ナマエは、あれから財団を正式に辞めて、ポケモン博士になった。
しばらく無職で交番にだらだらと居座っていたから、なんか仕事しろと言えば、じゃあといっていとも容易く、1ヶ月程で博士になって帰ってきた。
流石にあれには驚いたというか、やはりナマエは天才肌だったようだ。
それからは、ここでは機材が揃えられないからと、ハウオリの研究所に度々行っており、実験やらデータやらが集まるとまた交番に戻ってくる。
行った来たりするのは不便なくせに、ナマエはこの交番に居座る事にこだわった。
その時のねえちゃんは、私の家はここなんで、と嬉しそうに笑っていた気がする。
本当に、物好きなねえちゃんになったものだ。
おかげでこの交番は、ねえちゃんの研究用のパソコンやら荷物が増えてますます手狭になっていた。



「寂しかった?」


「別に、たかが3日だろ」


「嘘ばっかり」



ナマエは持っていたバッグを交番のカウンターテーブルに乱暴に置いて、俺の座るソファにどっかりと座った。
肩が触れ合うほど近くにやってきて俺に体重を預けると、こちらを見てにやにやと笑う。
それはまるで、甘えたなペルシアンのようだ。
大抵ハウオリから帰ってくると、こうして近寄ってきてはそのまま人の肩や膝で寝るのがお決まりである。
今日はどっちになるか。
どちらかといえば、膝にしてほしいところだ。
そんなお疲れなねえちゃんの肩を抱き寄せ、顔を近付ける。
唇が触れるか触れないかのところで、何かを思い出したナマエは、良い雰囲気をぶち壊す様にあ、と間抜けな声を出した。



「さっきアセロラちゃんに会った、エーテルハウス来てって」


「…今言うかよ」


「忘れそうだったから」



後で行ってきてね、とにこやかに言われて盛大に溜め息を吐き出す。
どうせ大した用事じゃ、ねえだろうよ。
はいはい、といい加減に返事をして、さっきの続きをしようとすると、今度は交番の扉が開く。
全く、こっちは3日振りだってのに、さっきからなんなんだ。



「すみません」



控えめに聞こえてきた声の方を見れば、ナマエが元いた財団の服を着て眼鏡をかけた、紫色のボリュームのある髪が印象的なねえちゃん。



「今さらここになんか用かい」


「ナマエ博士が、こちらにいると聞いて」


「…いますけど」



申し訳なさそうに俯くそのねえちゃんの呼びかけに、ナマエは少しだけ不服そうに返事をした。




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