あれから、ねえちゃんのトレーナーとしての特訓が始まった。
今日は、ナマエを連れてカプの村までやってきた。
まずは、戦える仲間を増やそうという魂胆だ。
もちろん、ポリゴンZにはちゃんと攻撃技を覚えさせてやった。
山のように余っていたハートのウロコや昔使ったわざマシンが、こんなに役に立つ時が来るとは思ってもなかった。
あとは、1つも持っていないと言い放ったねえちゃんに、空のモンスターボールも20個買い与えた。
これだけしておけば、十分だろう。
とりあえず草むらの外から様子を見させて、どんなポケモンを仲間にしたいかねえちゃんに尋ねる。
「あの子にしたいです」
「アブソルか、良いセンスしてんじゃねぇか」
ナマエが指差す方向を見れば、スラリとしたシルエットに白い毛並みと弓なりの立派な角が美しいアブソルが、草むらの中で佇んでいる。
あくタイプを選んでくれるとは、と少しばかり嬉しくなったが、ナマエにとっては見た目やタイプ、強さが選択の理由ではなかった。
なんとなく、こうなることは予想出来ていたが、こうも簡単に当たってしまうとは。
アブソルを見つけたねえちゃんは、目を輝かせながらその特徴について、聞いてもいないのに話始めた。
「なんといっても、自然災害を予知できるあの角…検知のメカニズムについては是非調査させてもらいたいところですね、もしかしたら私達の」
「いいから、早く行ってきな」
すぐ研究対象として見たがるナマエに、そういうと不服そうな顔をしながらこちらを見上げてきた。
おじさんはフィールドワークに付き合ってるわけじゃないのよ。
最後まで聞いてくれてもいいじゃないですか!と半ばヤケクソに投げたポリゴンZのボールは、アブソルのいる方とは全く違う方向に飛んでいった。
当然だが、ポリゴンZは何もいない場所に出てきて、どうして呼ばれたのかわからず戸惑っている。
野生のアブソルも、突然のことにびっくりしているようだ。
「え、えーと…ポリゴンZ、きあいだま!」
「そんなの覚えてねぇよ」
「え?何覚えてるんですか?」
きょとんとした顔でこちらを見てくるねえちゃんを見て、頭を抱えたくなった。
わかってはいたことだが、バトルに関しては本当にダメだった。
ただ、タイプの相性なんかは熟知しているためか、効果抜群を狙おうとしているあたり本人は至って真面目なのもよくわかった。
それにしても、昨日までの凛々しいねえちゃんは、何処に行ったのか。
初めてのバトルに慌てるナマエ、主人の無茶苦茶な指示に戸惑うポリゴンZ、その様子を見て更に困惑する野生のアブソル。
たった一匹のポケモンを捕まえようとしているだけなのに、この状況はなんなのか。
とりあえずほうでんを一発食らわせて、運良く麻痺にしたことは褒めてやろう。
「…まいっちゃうねえ」
見てやる、といったものの、相当面倒なことになりそうだと、深く溜め息を吐き出した。
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