その日、ほんの少しだけいつもより豪華な夕食を作っておいた。
彼女が帰ってきたら、新たな仲間達と共に食べようと思っていたのだ。
だが肝心の本人達はというと。



「…遅いですね」



家の外もすっかり暗くなり、夜も深まる頃、朝から出かけたナマエさまは未だに帰ってこなかった。
ポケモンが2匹もいるといっても、まだナマエさまも彼女の相棒達もそう強くはない。
もしかして何かあったのではないか、と夜更けと共に不安が募る。
こんな時は1つ嫌な想像が浮かべば、あれもこれもと立て続けに嫌なことばかりが浮かんでくるものだ。
だんだん居ても立っても居られなくなり、上着を羽織りながら帽子を被り、急いで靴を履いたところだった。



「すみません!只今戻りました!」



家の扉ががらりと勢いよく開くと、そこには泥だらけになって帰ってきたナマエさまがいた。
右手には間抜けな顔をしたヌメラ、左手には暴れるフカマルを抱えており、彼女の背後からは隠れきれていないゴースが控え目に顔を覗かせている。
立ちすくむ私の顔を見上げ視線がぴたりと合うと、ナマエさまは満面の笑みをこちらに向けた。
帰宅の遅さを注意しようと思っていたはずなのに、その笑顔が見れたのならそんな気持ちは一瞬で何処かに行ってしまう。



「フカマルとゴースですか、良いポケモン達ですね」


「いろいろ迷ったんですけど、やっぱりこの子達が良いなって思って」



ナマエさまは、両手に抱えた相棒達をぎゅっと抱き寄せ、嬉しそうに笑う。
そんな彼女に寄り添うように、ゴースがナマエさまの顔の周りを漂う。
腕の中の2匹は、ヌメラの顔にフカマルの手が食い込んでいるが、どちらもお構いなしのようだ。
そんな彼女達の微笑ましい様子に、温かい気持ちで満たされる感覚がした。



「では、新しいポケモン達と食事にしましょう」


「はい!」


「ですがその前に」



居間にあった手拭いを取り、ナマエさまの顔に手を添えてその汚れをそっと拭き取る。
彼女は少し驚いたような顔をして、頬を赤らめた。



「ごめんなさい、捕まえるのに必死で…」


「すっかりとポケモン達に夢中ですね」



それは良いことです、と言えば、彼女ははにかむように微笑んだ。
そんな彼女の様子に、またいつもより鼓動が早まるのがわかる。
それと同時に、胸の奥が締め付けられるような、少し妙な感覚がした。




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