オオニューラの世話に出かける時は、ナマエさま達も一緒に出かけるようになった。
だが、彼女達は実際に世話をしているわけではなく。
「ゴースト、今だ!たたりめ!」
彼女のゴーストは不気味な鳴き声と共に怪しげな気配を全身に纏うと、野生のルクシオの周りに人魂に似た紫色の炎を浮かび上がらせ畳み掛けるように攻撃する。
どくガスで相手のルクシオを毒状態にしてから、隙を見てたたりめで追い込む戦い方。
ナマエさまのポケモン勝負の腕も、随分と磨かれたようだ。
そんな彼女の特訓の様子を、岩場の上からオオニューラと見守るのも日常茶飯事になっていた。
オオニューラの籠のほつれを修理しながら下を見ればナマエさまと視線が合い、こちらに大きく手を振るのが見える。
「ノボリさーん!」
ナマエさまが満面の笑みで、自分の名前を呼んでくれるとなんだか決まりが悪く、つい伏せ目がちになる。
私が何かしらの返事をするまで手を振り続けるナマエさまに、小さく手を振り返すと彼女はまた嬉しそうに笑った。
隣のオオニューラがにやにやしながらこちらを見ていることは、確認しなくてもわかっている。
「さっきの、どうでした?状態異常も試してみたんですけど」
上手く出来てました?と聞きながら、私の腰掛ける岩場の下まで駆け寄ってくる。
ゴツゴツとしたその岩肌に手をかけて私を見上げる彼女は、いつもより少しだけ幼く見えた。
「適切な判断かと、ベノムショックでも良かったかもしれませんね」
「確かに、ゴーストのタイプとも一致してるしそっちでも良かったかも…」
ナマエさまが右手を顎に添えて考え込む仕草でゴーストを見つめていると、彼はそれを不思議に思ったのか顔の部分だけを器用に傾ける。
ちょっとした助言のつもりで言ったのだが、ナマエさまは私が思っていたよりもずっと頭を悩ませていた。
そんな彼女を見て、その前に休憩を兼ねてとある物を見せる。
「そろそろこちらは如何でしょう?」
「ノボリさんのおにぎり!」
ナマエさまに出会う前までは、1つしかなかった経木の包み。
今では2つ作って持ってくることが当たり前になった。
ナマエさまにそれを見せれば、目を輝かせて見上げる。
急いで岩場に登ろうとする彼女の手を取って引き上げれば、当たり前のように肩が触れ合うほどの距離で彼女は座る。
少し前まではなんとも思っていなかったが、今はどうだろうか。
落ち着かない心臓に、最近は最早なにかの病の類かと疑いたくなるくらいだ。
包みの片割れを渡すと、ナマエさまはいそいそと紐を解いていく。
いきいきイナホで作った少し大きめの握り飯を頬張ると、彼女は満足そうに顔を綻ばせた。
「ノボリさんのおにぎり好きです、今日もとっても美味しいですね!」
「…お口に合ったようで何よりです」
自分に向けられたわけでもないのに、年甲斐もなくその2文字がやたらと鮮明に聞こえる。
帽子の鍔を咄嗟に下げたが、オオニューラにはお見通しだったようだ。
私の顔を覗き込んで、くつくつと笑うオオニューラに余計なことは言わなくて良いです、と小さな声で戒めた。
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