「そろそろ手持ちのポケモンを増やしてみませんか?」
「新しいポケモン…ですか?」
朝食を摂りながら、近々言おうと思っていた事を彼女に話した。
ナマエさまは、不思議そうな顔をして茶碗を机の上に置く。
6匹まで連れて行くことができますよ、と言えば、ナマエさまは少し驚きながらも、心躍るのか前のめりで私の顔を見上げた。
「たくさんポケモンがいれば、勝負の幅もより広がります」
「なるほど、それもそうですね」
食事を済ませると、ヌメラと出かけてきます、と言って天冠の山麓の地図とモンスターボールを持ってナマエさまは家を出ていった。
大人が昼間にポケモンを連れて出かけたのだ。
なんてことはないはずだった。
「…オオニューラ、ちゃんと隠れてください」
にやにやと笑いながら、隣にしゃがみ込むオオニューラを横目で見る。
結局ナマエさまが心配で、つい、様子を見に来てしまった。
出かける前に崖登り崖の辺りを地図で見ていたことを思い出して、後から世話のついでという名目でオオニューラとこっそり向かったのだ。
丁度彼女はフカマルを見つけて、ヌメラと共に岩場に隠れているところだった。
じっとフカマルの様子を伺い、捕獲用のモンスターボールを握り締めるナマエさまを見る限り、もうポケモンの捕獲には手慣れたもののように見えた。
フカマルが背中を見せた瞬間、物音を立てずに素早く岩場から飛び出してモンスターボールを構えた時。
彼女のヌメラがその柔らかい身体を上に伸ばしながら、間抜けな鳴き声を上げた。
「しっ…!ヌメラ!」
唇に人差し指を押し当て慌てて注意するも、遅かった。
2人に気付いたフカマルは、振り向き挑戦的な鳴き声をあげると、小さな足で2人に近づいていく。
「もう!見つかっちゃったじゃない!」
怒られたヌメラはしょんぼりと身体を縮めたが、主人がりゅうのはどうを指示すると、先程の失態を取り戻すかのように口を大きく開けて、紫色の禍々しい波動を勢いよく放つ。
真正面からそれを受けたフカマルは、効果抜群の技によろよろと後退する。
隙を見せた瞬間を彼女は見逃さず、即座にモンスターボールを投げた。
フカマルが吸い込まれたボールを見守るナマエさまは、いつかヌメラを捕まえた時と同じように、緊張した面持ちだった。
地面で揺れるボールから火花が飛び散るのを確認すれば、彼女は嬉しそうな声をあげて、それに駆け寄って行く。
「要らぬ心配だったようですね」
ほうっ、と胸を撫で下ろした。
隣で同じように見ていたオオニューラが、そんな私の様子を見て、大きな鉤爪を口元に持っていきくつくつと笑う。
まるで、私の心の中を知った上で、からかっているようだ。
一声鳴けば、私にはオオニューラが何を言いたいのか、何となくわかっていた。
「改めて言わなくても結構ですよ、さぁ帰りましょう」
私がそう言えば、オオニューラは少しだけつまらなそうに後ろをついて来た。
ヌメラと、捕まえたばかりのフカマルが入ったボールを眺めて、楽しそうに笑うナマエさまを見れば、自然と笑みが溢れた。
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