ナマエさまがコトブキムラに向かってから、幾らか経った。
未だに、彼女がいない静かな自宅には慣れない。
初めの頃なんて、食べ切れもしないのに2人分の食事を作っては、1人で2日かかって食べたり、眠りにつく前に上の布団に向けておやすみなさいと言ってみたり。
今となってはそんな癖も段々となくなってきたが、慣れとは怖いものである。
そして、オオニューラも私のポケモン達も、なんだか寂しそうだった。
オオニューラは世話で訪れる度、もう1人いないのかと言うように鳴いた。



「まだお戻りにはならないようです」



岩場に腰掛ける私の隣を見つめるオオニューラに今日もそう告げると、やはり少しだけ寂しそうに俯く。
そういえば、一度だけナマエさまから手紙が届いたことがあった。
それにはコトブキムラに無事着いた、と書かれていた。
それ以降彼女からは、何の連絡もない。
便りがないのはなんとやら、という言葉もあるが、私はそれよりも不安の方が大きかった。
新しく出会う人、物、ポケモン。
それらによって、私達と過ごした日々はやがてナマエさまの中で薄れていくのではないか。
そんなことを考えてしまう自分に、嫌気が差していた。
なにより戻ってくると言ったナマエさまの事を信じていないような気がして、それが尚更嫌だった。
そんな考えを払拭するかのように、私はいつの日からか、キャプテンとしての使命と己とポケモンを鍛える事に没頭した。
きっとナマエさまも今頃ギンガ団のペリーラさまという方のもとで、鍛錬を重ねているのだろう。
もしかしたら、新しいポケモンを仲間にしているかもしれない。
新しい戦法も生み出して、更に強くなっていたとしたら。



「本当に、そうでしょうか」



ふと、そんな言葉が漏れた。
オオニューラが何か言ったかと、振り返る。
誰もが、変わることなく生き続ける、なんてことはない。
私だって、ここにやって来た頃に比べたら随分と変わった気がする。
新しい環境なんて、尚更だ。
彼女も、ポケモン以外に興味を持たれて何か新しい事を始めているかもしれない。
だとしたら、きっと。



「…お戻りになることは、ないでしょう」



私は、帽子を深く被り直した。
こんな事になるくらいなら、あの時引き留めれば良かっただろうか。
いや、そんな事は許されないだろう。
だから、私はお待ちしております、とだけ言ったのだ。
私の隣にやってきたオオニューラは、肩に鉤爪をそっと置く。
これは、オオニューラなりに私を慰めてくれているようだ。
大丈夫ですよ、とだけ言うと、オオニューラは寂しそうに小さく鳴いた。




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